OPINION

ロシアの残虐行為が今に始まったことではない理由

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ブチャで起きたとされるロシア軍による残虐行為は歴史上例外的なものではないという/Vasco Cotovio/CNN

ブチャで起きたとされるロシア軍による残虐行為は歴史上例外的なものではないという/Vasco Cotovio/CNN

(CNN) ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャでの残虐行為として浮上した画像は衝撃的だ。だがその内容は果たして本当に驚くべきものだろうか?

ピーター・バーゲン氏/CNN
ピーター・バーゲン氏/CNN

ロシアが過去数十年にわたり、どのように戦争を遂行してきたかを考えてみるといい。アフガニスタンからチェチェン共和国、シリアまで、それらの全ての戦争に特徴的なのは、民間人に大量の犠牲者が出る攻撃をロシア側が仕掛けたことだった。信頼に足る主張によれば、ロシア軍は民間人をその場で、裁判もせず処刑していたともみられている。

1980年代、当時のソ連がアフガニスタンで9年にわたる戦争を遂行した期間について、 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は以下のように報告した。「100万人を超えるアフガンの民間人が殺害されたとみられる。(中略)大半は空爆の犠牲者だ。行方不明者は数万人。その多くは裁判も経ずその場で処刑された」

残虐行為は次の10年間も続いた。今度は本国により近い地域が舞台となった。94年の第1次チェチェン紛争の間、ロシアの人権問題の専門家らによれば、2万5000人前後の民間人が首都グロズヌイでのわずか2カ月間の戦闘で殺害された。

第2次チェチェン紛争では、ロシア兵がグロズヌイにおいて少なくとも38人の民間人を裁判なしで処刑したという。99年12月下旬から2000年1月半ばまでの数字として、HRWが明らかにした。

また同年2月5日にも、ロシア兵は「少なくとも60人の民間人」に対し同様の処刑を行ったとしている。

国際人権連盟はロシアについて、00年にチェチェンで「裁判なしの処刑、殺人、身体的虐待、拷問を行った。敵対的行為に直接関与しない人々に対し意図的に重大な危害を加え、故意に民間人を攻撃した」と明らかにしている。

チェチェンでの2度の紛争を通じ、ロシアはかつて40万人の人口を抱えたグロズヌイに壊滅的被害を与えた。国連は、同市を「地球上で最も破壊された都市」と明言した。

より最近のシリア内戦では、8683人の民間人がロシアの爆撃によって殺害されたとシリア人権監視団が述べている。ロシアはシリアの独裁者のアサド大統領が敗北の危機に立たされていた15年、内戦に介入した。

残虐行為を犯しているのはロシアの従来型の軍隊だけではない。欧州連合(EU)は昨年、ロシア政府及び同国軍の代理として活動する民間軍事会社「ワグネル」に制裁を科した。制裁は「深刻な人権侵害」に関係するもので、具体的には「拷問のほか、司法によらない略式かつ恣意(しい)的な処刑」を含むとしている。EUが引き合いに出したのはリビア、シリア、中央アフリカ共和国でのワグネルの行動だった。ワグネルはすでに要員1000人をウクライナに派遣したと伝えられる。

我々が現在ブチャで目の当たりにしているのは、ロシアによる戦争の手法が機能している状況に他ならない。それは民間人を武力でねじ伏せ、あらゆる抵抗の可能性を消し去るべく策定されている。残念ながら、向こう数週間でさらに多くのブチャを見ることになると予想できる。

ピーター・バーゲン氏はCNNの国家安全保障担当アナリスト。米シンクタンク「ニューアメリカ」の幹部で、アリゾナ州立大学の実務教授も務める。近くトランプ政権に関する書籍のペーパーバック版が出版される。記事の内容は同氏個人の見解です。

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