30年間給料が上がらない日本の労働者、企業への賃上げ圧力高まる

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今年1月、東京のスーパーで野菜を買う人々/Yuichi Yamazaki/AFP/Getty Images

今年1月、東京のスーパーで野菜を買う人々/Yuichi Yamazaki/AFP/Getty Images

つまり労働者の賃金上昇率は5%に満たないことになる。一方でフランスやドイツといった他の主要7カ国(G7)は同時期で34%の賃金上昇を記録している。

米ドル換算で見たG7各国の平均年収の推移(OECD調べ)

専門家らによれば、賃金の停滞には一連の理由がある。日本は長く、今とは真逆の問題に苦しんできたというのがその一つ。つまり物価の下落だ。90年代半ばに始まったデフレは、輸入コストを押し下げる円高と国内の資産バブルの崩壊が原因だった。

「過去20年間、基本的に消費者物価インフレには変化がなかった」。OECDで日本担当エコノミストを務めるミュゲ・アダレット・マクガワン氏は、そう指摘する。

その上で、現在まで消費者は財布に打撃を受けることがなく、賃上げを求める必要も感じていなかったと付け加えた。

しかしインフレの高まりを受け、人々は給料が上がらないことに対する強い不満を口にし始める公算が大きいと、東京大学の山口慎太郎教授(経済学)は予測する。

変わりゆく労働市場

専門家らは日本の賃金が抱える問題について、他にも伸び悩む指標があるとみている。即ち生産性だ。

労働者が1時間当たりどれだけの成果を国内総生産(GDP)にもたらすかで計算される労働生産性は、日本の場合OECDの平均を下回る。山口氏によれば、おそらくはこれが賃金の上がらない最大の理由だという。

マクガワン氏は「一般的に、賃金と労働生産性は共に上昇していく。生産性が上がれば企業の業績は伸びる。そうなったときに企業はより高い賃金を提示できる」と説明した。

同氏によれば、日本の人口の高齢化もまた問題となる。労働人口の高齢化は、生産性及び賃金の低下とイコールになる傾向があるからだ。加えて人々の働き方にも変化が生じている。

マクガワン氏によると2021年、日本の労働人口全体の4割近くがパートタイムや非正規雇用だった。この比率は約2割だった1990年から上昇している。

「こうした非正規雇用の割合が増えれば、当然平均賃金も低いままになる。彼らの給与は正規雇用より少ないからだ」(マクガワン氏)

「終身」雇用

日本独特の労働文化が賃金の低迷につながっているというのがエコノミストらの見方だ。

多くの人々は伝統的な「終身雇用」制度の下で働いている。そこでは企業が並々ならぬ努力によって従業員を定年まで雇用し続けると、ムーディーズのアングリック氏は指摘する。

その場合企業は、業績好調時の賃上げに極めて慎重になることが多い。厳しい時期に従業員を守る資金を確保するためだ。

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