フランス、豪・EU間のFTA阻止を示唆 潜水艦契約の破棄受け
ニューデリー(CNN Business) 豪州政府がフランス製潜水艦の大型購入契約を破棄したことを受け、フランスは20日、欧州連合(EU)と豪州の間で交渉が進む自由貿易協定(FTA)を阻止する可能性を示唆した。
豪州は先週、米英との新たな軍事合意を優先して、フランスとの900億豪ドル(約7兆1000億円)規模の契約を破棄。フランス政府はこれに怒りを示している。
フランスのボーヌ欧州問題担当相は米ポリティコの取材に、「約束を守ることは民主主義国間や同盟国間の信頼の条件だ」と説明。この発言については報道官が確認した。ボーヌ氏は「もう信頼していない国との間に何事も起きなかったかのように通商交渉を進めることは考えられない」とも述べた。
豪州はAUKUS(オーカス)と呼ばれる安全保障合意の一環で、原子力潜水艦建造のための技術を供与される。豪州が以前にフランスからの購入で合意していた通常動力潜水艦に比べ、原潜は性能面で優れていると考えられている。今回の事態を受け、フランスは17日、駐米大使と駐豪大使を召還した。
EU・豪州間のFTAをめぐる交渉は2018年6月に始まり、これまでに11ラウンドの協議が行われてきた。対象となる分野は輸出障壁の除去や知的財産権など。次回ラウンドは今秋に予定されている。
通商交渉の権限を持つのは加盟27カ国を代表するEUだが、フランスが反対すれば交渉が進む可能性は低い。
EUのフォンデアライエン欧州委員長は20日、CNNとの単独インタビューで、フランスとの潜水艦契約の破棄に関して「多くの疑問」に答えを得る必要があると説明。「加盟国の一つが容認できない扱いを受けた。何が起きたのか、なぜそうなったのかを知りたい」と述べた。
欧州委員会によると、EUは20年、豪州にとって第3の貿易相手となっていた。19年には物品の貿易は360億ユーロ(約4兆6000億円)規模、サービス貿易は260億ユーロ規模に上った。