心停止は搬送しない場合も、急患も長時間待機 米ロサンゼルス郡「最悪の状況」に

新型コロナ患者に治療する呼吸療法士=2020年12月14日、米カリフォルニア州のシャープコロナド病院/Mario Tama/Getty Images

2021.01.06 Wed posted at 12:20 JST

(CNN) 心停止状態で救急車を呼んでも病院に搬送してもらえない。救急患者が緊急治療室の前で何時間も待たされる――。新型コロナウイルス感染が急拡大している米カリフォルニア州ロサンゼルス郡が、そんな状況に陥りつつある。

「病院は内部緊急事態を宣言し、教会のジムを病棟として開放しなければならなくなっている」「医療従事者は体も心も疲れ切って病んでいる」。ロサンゼルス郡のヒルダ・ソリス行政長官はそう語り、この状況を「人的災害」と形容した。

当局者によると、5日の時点で新型コロナウイルスのために入院している患者はロサンゼルス郡だけで約7900人に上り、うち21%が集中治療室(ICU)に入院している。入院患者は前日比で200人以上増えた。

5日には新たに224人の死亡が発表され、同郡の死者は累計で1万1000人を超えている。

同郡の救急隊は、生存の可能性がほとんどない患者は病院に搬送しないよう指示された。現地の病院によると、具体的には心停止して現場で蘇生できない患者が対象となる。「そうした患者を病院に搬送したとしても生存率は極めて低い。従って現時点では無意味であろうとみなされる」(病院関係者)

この対応についてはロサンゼルス郡救急医療サービス局が先週、救急隊員に通知した。新型コロナウイルスによって救急医療に重大な影響が出ているとして、18歳以上の患者については、病院外で心停止し、現場で自己心拍再開が達成できなかった場合は搬送しないよう指示している。

ロサンゼルス郡では補給用の酸素も不足状態に陥っている。同郡救急医療サービス局は酸素を節約する必要があるとして、「救急隊が酸素補給を行うべきは、酸素濃度が90%を切った患者のみとする」と指示した。酸素濃度が90%以上であれば、臓器や組織への通常の血液循環は維持できるとしている。

新型コロナ検査を待つ車の列=2020年11月30日、米カリフォルニア州ロサンゼルスのドジャー・スタジアム

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事によると、ロサンゼルス郡とサンホアキンバレーでは、酸素の不足を受けて「酸素対策本部」が組織された。地元や州のパートナーと連携して酸素タンクを補充し、必要とする病院や施設に届ける。

カリフォルニア州の人口は米国で最多。それが入院患者の急増や感染率の激増につながっている。州公衆衛生局によると、5日現在、新型コロナウイルスによる州内の入院患者は2万2000人以上。死者は2万7000人を超え、5日だけで新たに368人の死亡が報告された。

ロサンゼルス郡のバーバラ・フェラー公衆衛生局長は、「ホリデーや年越しパーティー、帰省旅行の結果として、症例数の増加は今後数週間にわたって続くだろう」「1月は今回のパンデミックで最悪の状況を経験することになりそうだ」と話す。

たとえ患者が病院に搬送されたとしても、病院に空きがなければ何時間も待たされる可能性もある。

「患者が救急車の中で救急医の手当てを受けながら待たされる状況もある」と病院関係者は述べ、別の救命救急医は、待ち時間が数時間に及ぶこともあると指摘した。

病院前で待たされる救急車が増えれば、通報を受けて対応できる救急車は減り、さらなる遅れを招く。状況は一層悪化するかもしれないと救急医療関係者は予想している。

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