本当は高級料理? カンボジアでタランチュラのフライを堪能

タランチュラはカンボジアでは珍味として人気のある食べ物だ

2017.03.25 Sat posted at 18:33 JST

(CNN) 口から垂れ下がったタランチュラは死んでいるようだが、やはり恐ろしいことに変わりはない。客観的にみると味はそれほど悪くなく、カニのようだ。ただ、味は見た目やにおいの影響を強く受けるとする科学者らの見方を踏まえると、この毛むくじゃらのけだものを目にした瞬間に私の心が決まってしまっても驚くことではないだろう。

「気持ち悪い」

カンボジア北西部シエムレアプで、専門家の指導のもと、伝統的な調理法でタランチュラをフライにした。だが、結果は同じだった。ニンニクのにおいと風味だけでは、悪夢のようなその外見を克服することはできない。

アジアの一部では変わった写真を撮りたがる旅行客向けに、虫を調理したものが観光地で売られている。ただ、現地の人の大半は実際には、こうした虫を食べるのが好きではないことが多い。観光客からお金を引き出すための策略に過ぎない。

しかし、カンボジアのタランチュラの場合は事情が異なる。タランチュラは珍味とされており、大きなものは最大で1ドル(約112円)で売られている。最低日給が約6ドルの国にあっては大金だ。

料理講師のアウチ・ラタナさんはシエムレアプの路上でタランチュラの揚げ物を売って生計を立てている。アウチさんは英語通訳を介し、カンボジア人は本当にクモを食べるのが好きだと指摘。数十匹が売れる日もあると話す。冷えたビールなどのつまみとして最適だが、非常に高価なため誕生日など特別なイベントのときにしか食べないという。

タランチュラがカンボジア料理に取り入れられたのは必要に迫られてのことだ。

タランチュラのフライに挑戦

通訳によると、1970年代にカンボジアを支配した急進共産主義運動、クメール・ルージュの政権下で貧困や飢えが悪化して、人々は手に入る生き物なら何でも食べるようになった。

タランチュラやサソリ、カイコ、バッタなど、こうした生き物の一部は味が良く、食糧難が終息した後もそのままカンボジア料理の一部として残った。

アウチさんが売るタランチュラの大半は、シエムレアプから南東に200キロ以上離れたカンポンチャンの産品だ。同地では、ハンターが何日もかけて巣を探し、巣を見つけると、棒を突き刺すか熱湯で満たして中のタランチュラを殺す。その大半はアウチさんの店のように鍋で料理されることになる。

アウチさんの料理教室では、カイコやバッタの調理法も学ぶことができる。アウチさんと過ごした記者の経験を表現するには「ユニーク」の言葉が最も適切だ。

まず特に太ったタランチュラ3匹を選び、砂糖や塩と水などを混ぜた牛乳のような液体の中に入れる。十分に漬かったところで手で取り出し、揚げ物用のざるに置く。アウチさんは、揚げる時間は45秒以内にすべきだと強調。「そうすれば外はカリカリ、中は柔らかくなる」と話す。

記者は、油で揚げることでタランチュラの見かけがもう少し食欲をそそるものになるのではないかと期待していた。

カリッと揚げられたタランチュラ

だが、そんな幸運は訪れなかった。

ざるを持ち上げても、体毛が何本か焼け焦げた以外、外見はほとんど変わっていなかった。

アウチさんはこのうち1匹を記者に渡し、食べるよう身ぶりで促した。私はひるまないように努力していた。アウチさんと通訳は揚げたてのタランチュラを本当に喜んでいたため、その雰囲気を壊したくなかった。

自分の顔の前にタランチュラを持ってくると、細くカリッとした足が一番マシなように思われた。だが通訳は、私が安易な選択肢に逃げようとしていることに気付き、「最もおいしい体の部分を先に食べましょう。体の方が味がする。足はあまりおいしくない」と促した。

その数秒後、記者の歯がタランチュラの胴体をかみ砕くと、内臓が口の中に広がった。私は「カニ、カニ、カニ。カニのような味だ」と心の中で繰り返していた。

最初にタランチュラの姿を見ていなければ良かったのだが。

本記事はフリーランスのフォトジャーナリスト、ローナン・オコネル氏による寄稿です。

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