訪中の鳩山元首相の尖閣「係争地」発言に批判、国賊の指弾も

沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)

2013.01.20 Sun posted at 18:07 JST

(CNN) 日本の鳩山由紀夫・元首相(66)が最近の私的な訪中で、尖閣諸島(中国名・釣魚島)を「係争地」と認める発言を行い、日本政府が批判する事態となった。小野寺五典・防衛相は「国賊」との言葉も使い、不快感を表明した。

4日間にわたって訪中していた元首相は16日、北京での記者会見で「日本政府は日中間に領土論争はないと言っているが、歴史を見るなら論争はある」と指摘した。領土論争は存在しないとする政府の公式見解とは異なる認識だった。

これを受け防衛相は17日、鳩山氏の言動が中国に政治的に使われたのなら、不幸なことだと主張。「国賊という言葉が心の中によぎった」とも吐露していた。

鳩山氏は同日、夫人と共に、旧日本軍が1937年、30万人ともされる住民を殺害した記録などを残す南京大虐殺記念館に足を運んだ。同館を訪れた日本の首相経験者としては3人目となった。

中国のメディアは元首相が記念館で頭を下げ、黙祷(もくとう)を捧げる姿の写真を載せ、「日本の戦争犯罪を謝罪した」と大々的に伝えた。

米テンプル大学日本校のアジア問題研究の責任者ジェフ・キングストン氏は鳩山氏の記念館訪問は中国国民の目には大きな価値があるものとうつり、日本の国民全員は戦争中の行為を忘却しているとの中国内の主張を弱めるものだと指摘。鳩山氏の訪問は日中関係に武力的な威嚇(いかく)なととは異なる角度から方向性を与える試みだったとも分析した。

元首相による南京大虐殺記念館への訪問は中国のソーシャルメディアで広範な議論を呼んだ。インターネットでは意見調査も実施され、22万2000人以上の8割が、旧西ドイツのブラント元首相がポーランドの首都ワルシャワのユダヤ人強制居住地で示したひざまずいての謝罪と比べ、大きな政治的意味合いはないと応じていた。

また、別の設問に対しては14万人のうちの約3分の2が鳩山氏の今回の行動は他の日本の政治家への規範とならないと答えていた。

ただ、中国中央テレビのコメンテーターはブログを通じ、元首相の行動を称賛し、中国人に対し希少とも言えるその異例の親切心を記憶に刻むべきと促した。「中国人はこれまで虐殺の事実を認めない日本を再三叱責してきた」と述べた。

国営の新華社通信は論評で、いかなる日本人をも説教してきた国民の愛国心は中国を苦境に導いてきた側面があると指摘。一方で、国営紙の環球時報は論説で、現職の政治家ではない鳩山氏が親善友好のわずかの言動を示したからといって対日政策を変更すべきではないと説いた。

中国では第2次世界大戦中に旧日本軍が犯した虐殺への悲憤はまだうずき続けており、昨年9月に中国内で多発した反日暴動を煽る下地ともなっていた。

尖閣諸島の元地権者にCNNがインタビュー

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