ニューハンプシャー州予備選直前 ヘイリー氏とトランプ氏への有権者の意見は

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共和党からの指名を目指しているニッキー・ヘイリー前サウスカロライナ州知事/Joe Raedle/Getty Images

共和党からの指名を目指しているニッキー・ヘイリー前サウスカロライナ州知事/Joe Raedle/Getty Images

ニューハンプシャー州ホリス(CNN) ダニエル・ブラウンさんは2000年米大統領選の際、ニューハンプシャー州の共和党予備選挙でジョン・マケイン氏に投票した。その8年後には民主党の予備選挙でバラク・オバマ氏に投票した。そして今月23日は民主・共和両党にはっきり意思表示するべく、前サウスカロライナ州知事のニッキー・ヘイリー氏に投票するつもりだ。

「新しい考えが必要だ、若い新世代が到来するべきだ」と言うブラウンさんは、支持政党を表明していない有権者。候補者本人からサインをもらったばかりの「ヘイリー2024」と書かれた支持表明看板を胸に抱えながら、「ヘイリーはやる気にあふれている。国のためにいろいろやってくれると思う」と語った。

民主・共和どちらにも属さないブラウンさんのように、ニューハンプシャー州には支持政党を表明していない有権者や無党派層が大勢いる。こうした層は同州の有権者の大半を占め、ヘイリー陣営の要となる存在だ。ヘイリー氏のニューハンプシャー州での勝算、ひいては選挙戦の行方は、23日の予備選挙で無党派票をどれだけ獲得できるかにかかっている。

19日時点で、支持政党を表明せずに有権者登録を済ませたニューハンプシャー州の住人は34万4335人。有権者全体の40%近くにのぼる。

現在ヘイリー陣営は、郊外から沿岸部にいたる共和党員および浮動票をターゲットにしていると同陣営の顧問はいう。とりわけ力を入れているのが、ドナルド・トランプ前大統領がクリス・スヌヌ州知事など他の共和党議員に押され気味な選挙区だ。トランプ氏は16年大統領選のニューハンプシャー州予備選挙で勝利を収めているものの、16年、20年いずれも決戦投票では民主党候補に敗れている。

21日に発表されたCNNとニューハンプシャー大学の共同世論調査によると、今度の共和党予備選挙で投票すると見られる有権者の50%がトランプ氏を支持している。対するヘイリー氏の支持率は39%。ヘイリー氏の支持率は支持政党を表明していない登録有権者では58%と半数を超えているものの、トランプ氏は共和党登録有権者の67%から支持されている。

21日午後に出馬を取りやめたフロリダ州知事のロン・ディサンティス氏は、先の世論調査でニューハンプシャー州の共和党有権者から6%の支持しか得られなかった。代議員獲得の条件として共和党の規則が定めた支持率10%以上という基準を下回る。

ニューハンプシャー州で勝利すればヘイリー陣営も弾みがつき、献金も増えそうだ。いずれも来月24日のサウスカロライナ州、さらには3月5日の「スーパーチューズデー」を戦う上で欠かせない。

だが敗北すれば、共和党がトランプ氏の下に結束するタイミングを早めることになるかもしれない。

大統領選から撤退した元候補者で、ごく最近トランプ氏支持を表明したのが昨年11月に出馬を取りやめたティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州選出)だ。スコット氏は19日にコンコードで行われた政治集会でトランプ氏支持を表明した。ヘイリー氏はスコット議員の支持表明を一蹴し、トランプ氏は政治の沼をさらうと公約に掲げたにもかかわらず、「ワシントン内部の人間」と結託していると声明を発表した。

「だが男たちは男たちがすることを行うのだろう」(ヘイリー氏)

保守派の支持固めを図るトランプ陣営

トランプ氏はニューハンプシャー州の選挙活動で共和党員を味方につけ、ヘイリー氏の締め出しを図っている。

トランプ氏は17日にポーツマスで行われた選挙集会で、「とくにニッキー・ヘイリーは、民主党員やリベラル層が共和党予備選挙に入り込むのを当てにしている」と支持者に語った。

集会でのトランプ氏の主張は間違いだ。民主党員が共和党予備選挙で投票することは認められていないし、共和党または支持政党なしでの有権者登録は昨年10月で締め切られた。支持政党なしで登録した有権者は、選挙当日に民主・共和いずれかの投票用紙を選択する。

ヘイリー陣営の政治資金を支援し、保守派の富豪チャールズ・コーク氏が後ろ盾となっている政治団体「AFPアクション」の上級顧問グレッグ・ムーア氏は19日、同団体のデータからヘイリー氏の支持基盤に保守派がいることが分かると明らかにした。昨年11月にヘイリー氏支持を表明したAFPアクションは、ニューハンプシャー州の21万人以上の住民に接触した。

「中道派はみなヘイリー氏支持で、保守派は全員トランプ氏支持だという見方もあるようだ。だがそれは正しくない」とムーア氏は述べた。

トランプ氏は知らないかもしれないが、ニューハンプシャー州で先週行われたヘイリー氏の政治集会や市民との対話集会には有権者が大勢詰めかけていた。そのうちの1人が、トランプ氏に2度投票したローチェスター出身のスーザン・ライスさんだ。

ニューハンプシャー州とメーン州で手芸店を営むライスさんは、トランプ政権下の18年、中小企業のリーダーを披露するイベントでホワイトハウスに招かれたことがある。米国は前に進むべきだというのがライスさんの考えだ。

「私は根っからの共和党員だ。人生ずっとそうだった」とライスさん。「そろそろ女性大統領が出ていいころだと思う。ヘイリー氏の外交政策には賛成だ。国境問題もちゃんと理解しているし、それに対して何をしたいのか十分分かっているところも好ましい」

ライスさんはトランプ氏に食傷気味で、共和党を立て直すヘイリー氏の手腕に期待を寄せているという。

「裁判が心配というわけではない」とライスさんは言い、「だがお荷物だ。正直、トランプ氏の口から時々出てくる発言ときたら、オブラートに包んで言うなら、中傷であり、人を見下している」と述べた。

ホリス在住のマイケル・ルイスさんは、トランプ氏の経済政策や国境対策、北大西洋条約機構(NATO)との関係については支持しているものの、「平均余命を超えている」候補者には投票できないと語る。

ルイスさんはまた、トランプ氏が決選投票の際に、出馬資格を満たしているかどうか疑わしいとも語った。

「選挙活動をして、(共和党の全国)党大会があって、その後ドナルド・トランプ氏の有罪判決という流れになると思う」とルイスさんは言う。「結局は代理候補者を立てる羽目になるだろう。だったら答えはヘイリーだと思う」

かつてトランプ氏に票を投じた有権者の一部はヘイリー氏という選択肢に前向き、または熱心だが、とはいえニューハンプシャー州のトランプ氏の支持基盤は依然根強い。

トランプ氏は18日、FOXニュースで、「MAGAはヘイリー氏とは相いれない」と語っている。

19日午後、キングストンのバー「サドルアップ・サルーン」の雰囲気がまさにそうだった。その日は共和党のJ・D・バンス上院議員(オハイオ州選出)が数十人のトランプ氏支持者を前に集会を開いていた。参加者に取材したところ、ヘイリー氏のライバル候補と同じように、同氏の外交路線や保守主義の姿勢を批判する声が聞かれた。

集会に参加したナシュア在住のシルビアさん(本人の希望でファーストネームのみ記載)は、トランプ氏がヘイリー氏を副大統領候補に選んだ場合、決戦投票は見送ると語った。

シルビアさんはヘイリー氏について「RINO(ライノ=名ばかり共和党員)だ。戦争を挑発している」と言った。「まったく賛成できない」

トランプ氏に投票する予定のビル・ジャクソンさんはハンプトン出身の86歳。ヘイリー氏はエリート層からしか支持を得られないと考え、民主党員の票が必要だと言うトランプ氏の発言を繰り返した。

「ヘイリー氏は戦争賛成派だ。それに移民、不法移民も支持している」とジャクソンさんは言う。「彼らを自分たちと同じように扱うべきだとヘイリー氏は言う。とんでもない、それはない。彼らは違法にこの国に来ている」

トランプ陣営や同氏を支持する特別政治活動委員会(スーパーPAC)は、国境の安全を守るにはヘイリー氏では弱いとの見方を広めようとしている。ヘイリー氏はこれに対し、自分が政権についたあかつきには国境の安全保障が最優先事項になると発言した。同氏は自らを保守派と位置づけ、米国の強力な外交政策を打ち出すことで戦争抑止になると述べた。

トランプ氏、そしてバイデン氏に代わる代替案

後を追うヘイリー氏は、アイオワ州党員集会の夜から展開している主張をさらに一歩推し進め、トランプ氏およびジョー・バイデン大統領の2期目を阻止したい有権者にとっては自分こそが最善の選択だと発言している。決戦投票では共和党候補争いの首位を走るトランプ氏よりも、自分のほうがバイデン氏に大差で勝利するだろうという世論調査を例に挙げ、自分が大統領になればいずれ共和党は上院や下院、州知事選で勝利を挙げられるだろうと主張した。

米マリスト大学が19日に発表した世論調査によると、仮に決戦投票がヘイリー氏とバイデン氏の対決となった場合、ニューハンプシャー州での両者の支持率はほぼ同じで、それぞれ47%と44%だった。一方トランプ氏はバイデン氏に7ポイント引き離されている。

またヘイリー氏は年齢から任期中に承認した政府予算の額にいたるまで、トランプ氏とバイデン氏の共通点を引き出だそうとし、いずれの大統領も「お荷物」を抱えていると述べた。

ヘイリー氏の路線修正された演説は、トランプ陣営に対する反論の色がこれまで以上に強くなっている。トランプ陣営が騒ぎ立てるヘイリー氏の経歴のひとつが、20~30代の定年退職年齢の引き上げを求める姿勢だ。最近放映された政治CMでも、ヘイリー氏が現在の社会保障額を削減しようとしていると誤った主張を繰り広げている。

一方ヘイリー氏は、トランプ氏も社会保障の受給年齢を70歳に引き上げる案を支持していたと指摘する。トランプ氏の2000年の著書「The America We Deserve」で、社会保障の受給年齢の引き上げが支持されていた。だがCNNが昨年報じたように、16年の大統領選に出馬してからは、トランプ氏は受給資格の制限の是非について立場を明確にしていない。

ヘイリー氏は18日にホリスで行われた集会で、「あちらが私について出まかせを言うつもりなら、こちらは同氏の真実を語ろうではないか」と述べた。「あれこれいろいろ言われているが、結局のところは全部にぎやかし、復讐(ふくしゅう)だ。そうした恨みつらみこそ、我々が排除しようとしているものだ」

そうしたメッセージはホリスの集会に参加していたナンシー・プロツマンさんの胸にも響いた。支持政党を表明していないプロツマンさんは、トランプ氏を支持しない候補者をずっと求めていたという。プロツマンさんは会場を後にする際、共和党予備選挙の投票用紙をもらってヘイリー氏に投票するつもりだと語った。

「トランプ氏を次期大統領にさせないためなら、力のおよぶかぎり何でもする」とプロツマンさんは言い、「だがヘイリー氏の発言は気に入った。バイデン氏にも当選してほしくない」と語った。

ヘイリー氏に投票するのは賛同からか、それともトランプ氏の阻止からかと尋ねると、プロツマンさんは理想的にはその両方だと答えた。

「ヘイリー氏は素晴らしい大統領になると思うので、勢いに乗るきっかけになれば」とプロツマンさん。「もちろん、トランプ氏の阻止にもつながることを心から願っている」

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