米諜報当局による中国監視の実態、国防総省の流出文書から明らかに

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米国防総省の流出文書の記述からは、同国諜報部門による中国監視の実態が垣間見える/Kiichiro Sato/AP

米国防総省の流出文書の記述からは、同国諜報部門による中国監視の実態が垣間見える/Kiichiro Sato/AP

香港(CNN) 高度の機密性を有する米国防総省の一連の文書が過去数週間でネット上に流出し、米国による情報収集の実態が明らかになった。その対象は主要な提携国や敵対国、競合する国々にまで広がり、中国に絡む情報も含まれる。

文書の多くは、ウクライナの戦場とロシアによる作戦に関係する内容だ。その中には米国がロシア国防省や同国の民間軍事会社ワグネルにどの程度入り込んでいるかをうかがわせるものもある。

しかし、米国による情報収集のごく一端が垣間見えるだけとはいえ、一定量の文書からは複数の国防当局者が中国についての情報を集めている様子もまた示唆される。米国はかねて中国を「国際秩序に対する最も深刻な長期的課題」と位置付けている。

CNNは53件の流出文書を検証。これらは全て、2月中旬から3月上旬にかけて作成されたものとみられる。

多くの文書は米当局者が本物と認めており、統合参謀本部の諜報(ちょうほう)部門が作成したことを示す印が入っている。概要説明のための書類とみられる。

CNNが確認した文書は、ロシアの活動に関する記述が中国を上回るものの、米国が中国政府の活動に関する情報収集を行う様子も含まれている。とりわけウクライナでの戦争における中国の潜在的な関与に米国がどのような懸念を抱いているかが示される。

中国とウクライナ

重要な言及の一つは、ロシアの緊密な戦略的パートナーである中国が、ロシア政府のウクライナでの作戦に支援を提供するのではないかという懸念だ。

1件の文書では、中国がウクライナ軍によるロシア国内への攻撃を利用する可能性があると指摘。ウクライナ軍がロシア国内のかなり内側に位置する標的を爆撃した場合、中国はこれを好機と捉えて北大西洋条約機構(NATO)を侵略者と位置付け、ロシアへの支援を拡大するかもしれないと分析する。攻撃が大規模だと中国側が判断すれば、そうする可能性があるという。

大規模なウクライナ軍の攻撃が米国やNATO加盟国の武器を使用したものであれば、中国はこれを米国が紛争激化に直接の責任を負っている兆候とみなすだろうと、文書は主張する。これにより中国は、ロシアに向けた殺傷能力を有する武器を含む支援を一段と正当化するかもしれないという。

中国政府はこれまでのところ文書流出に関する公式のコメントを発表していないが、国内の一部報道では、この件を取り上げている。

中国共産党機関紙、人民日報の海外版の記事は「近年、米国による同盟国の監視に絡む複数のスキャンダルが取り沙汰され、何度か国際社会を混乱に陥れたにもかかわらず、当の米国はいまだにこうした行為を『思いとどまる』つもりがないようだ」と論じた。

中国に対する諜報

中国にまつわる文書の言及からは、米国が中国の武器開発や海軍の活動を監視していることもうかがえる。

2月25日付の記述は「開発段階にある」兵器「DF27」 の飛行試験に関するもの。文書はこれを中距離弾道ミサイル級の多機能性を有した極超音速滑空体と説明し、「高い確率で」米国のミサイル防衛システムをかいくぐるとしている。

別の文書には中国海軍が最近、新たな領域への配備を行ったことが記されている。その際ヘリコプターを運搬する攻撃艦が初めて配備に加えられたとしている。

またシギント(信号情報)を情報源とする1件の文書では、中東ヨルダンの外務省が2月下旬、中国政府に対し両国の経済関係を継続する利益について確認する計画だったことが明かされている。これに先立ち中国政府は、ヨルダンでの第5世代移動通信システム(5G)導入に中国企業が関与していないとの不満を述べたと報じられていた。

同じくシギント由来の文書によれば、中米ニカラグアもカリブ海沿岸の深水港の建設について、中国企業と交渉中だという。文書では情報源を示していないものの、ニカラグアは「おそらく経済投資と引き換えに、中国海軍のアクセスを認めることを検討するだろう」としている。一方、中国は現時点で海外の基地使用権やニカラグアにおける軍事アクセスの獲得への意欲を表明していないと、文書は付け加えている。

米司法省は、これらの文書がどのような経緯でソーシャルメディア上に流出したのか調査中だと述べた。

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