バイデン氏が勝利確実、2020年米大統領選を振り返る

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2020年大統領選で勝利を確実にしたバイデン氏/Drew Angerer/Getty Images

2020年大統領選で勝利を確実にしたバイデン氏/Drew Angerer/Getty Images

(CNN) 2020年の米大統領選は民主党候補のジョー・バイデン前副大統領が7日夜、勝利宣言の演説を行い、波乱に満ちたドナルド・トランプ大統領の4年を受けて、団結と「国民の魂」を取り戻すことを約束した。

バイデン氏は五大湖周辺で「ブルーウォール(青い壁)」を築きなおした。そこは4年前にトランプ氏が勝利した場所だった。バイデン氏はまた、アリゾナ州やジョージア州で、ここ最近では最も力強い民主党のパフォーマンスを見せた。

77歳のバイデン氏は1972年の上院議員選で歴代の中でも若い上院議員として当選したが、今回の選挙戦の勝利により最も高齢の米大統領として就任する。

3度目となる大統領選への出馬だったが、バイデン氏は非白人層や郊外の女性層、若年層や高齢層といった人々の連合を生み出したほか、無党派層や不満を持った共和党員を十分に取り込み、激戦州のいくつかで僅差での勝利をものにした。

バイデン氏の勝利によって、副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員は歴史的な偉業を成し遂げた。米国で女性の参政権が保障されてから100年後、ハリス氏は米国初の女性副大統領となるほか、アフリカ系としても南アジア系としても初の副大統領となる。

民主党は下院選や上院選では望むような結果は得られなかったが、下院では過半数を維持する見通しだ。上院の議席数は、来年1月5日に行われるジョージア州の上院議員選の決選投票の行方次第となりそうだ。

以下で今年の大統領選を振り返る。

バイデン氏がブルーウォールを再建

バイデン氏が五大湖周辺の工業地帯の州で「ブルーウォール」を再建できたのは、同氏が指名獲得に向けて民主党員に示した政治的な議論だけが要因ではない。ペンシルベニア州スクラントンの中流階級で育ったというアイデンティティーの核心があったからだ。同氏は50年近くこのルーツとのつながりを国政で失ったことはなく、同じような地域を民主党の支柱に取り戻せる可能性を有していた。

バイデン氏の陣営は南部の「サンベルト」と呼ばれる激戦州にも目を向けていた。そして、ヒラリー・クリントン元国務長官が4年前に勝利したすべての州に加えて、ネバダ州でも勝利。アリゾナ州とジョージア州でもリードしている状況だ。

しかし、このブルーウォールがバイデン氏にとって第一の焦点であり最終的に勝利を決定づけた。バイデン氏は最後の2日間でペンシルベニア州内を巡り、選挙戦投票日には子ども時代を過ごしたスクラントンなど懐かしの場所を再訪した。

ジョージア州は決選投票に

上院の支配権をめぐる争いは延長戦に入った。ジョージア州の上院議員選2議席とも決選投票が来年1月5日に行われるためだ。これにより共和党が上院で過半数を維持できるかどうかが決まりそうだ。

CNNの予測では、アラスカ州とノースカロライナ州の勝者はまだ決まっていない。だが、両州で共和党候補が現在のリードを維持した場合、民主党が48議席、共和党が50議席となる。もし民主党が過半数を取りたいなら、ジョージア州で2議席とも制し50議席対50議席に持ち込むしかない。上院では採決が同数になった場合、次期副大統領のハリス氏が最後の1票を投じることができるためだ。

決選投票はジョージア州独自の決まりがあるためで、11月の選挙で勝つには獲得票数で1位の候補者は投票の過半数を得る必要がある。現職の共和党議員はわずかにリードしているが50%の得票にはわずかに届いていない状況となっている。補選についても決選投票となる。

ジョージア州の決選投票は両党による総力戦となりそうだ。

民主党は歴史的にジョージア州の決選投票では劣勢だ。2008年の選挙では民主党候補は3ポイントの差で敗北したが、決選投票では15ポイント差の負けとなった。しかし、民主党候補はここ数年、決選投票でより差を縮めているほか、知事選の候補者だったステーシー・エイブラムス氏による取り組みによって民主党候補は今年はより戦える位置にいる。

トランプ氏のかんしゃく

敗北した大統領候補による敗北宣言は重要な米国の伝統であり、勝者に正統性を与え、民主的な手続きを確認することを助ける。

しかし、トランプ氏は、そうした伝統的な役割を担おうという気はなさそうだ。むしろ、ホワイトハウスから出て行く過程でそうした伝統のプロセスを引き裂く決意をしているように見える。

トランプ氏は側近との会話でバイデン氏に対して負けを認める考えはないと述べているという。

トランプ氏はツイッターへの投稿で、不在者投票の票数を集計する合法的な手続きに対して不平を漏らし、選挙が「盗まれた」などと主張している。こうした投稿の大部分にはツイッターから警告のラベルが表示されている。

ハリス氏が歴史を作った

カマラ・ハリス氏は、「女性」「アフリカ系」「南アジア系」としていずれも初めての副大統領として選出された。

ハリス氏が突破口を開いた大きな歴史的意義は、いくつかの激戦州で開票が数日にわたって続いたことで、一時的に見失われたかもしれない。しかし、今後、来年の1月20日の就任式が近づくにつれて、注目を集めることになるだろう。

トランプ氏の政治キャリアはバラク・オバマ前大統領の信用を落とすため出生地について疑義を唱える「バーサー」運動から始まった。そして、アフリカ系初の女性副大統領の誕生とともに、終わりを迎えることになる。

投票数が急増

2020年の大統領選の特徴は、最近の米国史上で最も参加意欲の高い有権者たちであり、両党の支持基盤の意欲をかき立てていたことを浮き彫りにした。

バイデン氏とトランプ氏はそれぞれ、米国の大統領選で史上最も多く得票を得た候補者と2番目に多く得票を得た候補者となった。バイデン氏は7500万票以上を獲得し、トランプ氏も7000万票を超えた。投票率は73%超を記録した1900年以来最高の水準に達する勢いだ。

敗北はしたものの、トランプ氏は再び、世論調査を上回るパフォーマンスを見せ、支持基盤である農村部に住む白人の労働者階級の有権者からの支持を増やした。

共和党にとっての大きな問題は、トランプ氏が動員した白人の労働者階級を他の共和党候補者の支持につなげることができるのか、それともトランプ氏に特有の現象なのかということだ。前回中間選挙での共和党の敗北は、後者の可能性を示している。

「青い波」は起こらず

民主党は、2018年の中間選挙のような議席数の増加を期待して今年の選挙戦に入った。中間選挙では郊外での支持が大きく下院の過半数を押さえるに至った。

民主党は今年、下院の議席のさらなる積み増しや、決定的な上院の過半数の獲得、2021年に行われる選挙区の再編の手続きで民主党の発言力が高まるよういくつかの州の議会で権力を奪還することを望んでいた。

だが、それは起こらなかった。

民主党にとっては「大失敗」

民主党は下院で過半数は維持するもののいくつかの議席は失いそうだ。民主党は重要州の議会で勢力を伸ばせなかったほか、一部では支持を失った。メーン州やノースカロライナ州の上院議員選では競ったものの敗北した。

民主党員としては悲喜こもごもの選挙戦となった。トランプ政権は終焉(しゅうえん)を迎えるが、選挙の失敗の後始末をしなければならない。

「サンベルト」では勝利も失敗も

全体的な結果は、まさしくバイデン氏の望んでいた通りだった。バイデン氏は、ブルーウォールを再建したほか、アリゾナ州やジョージア州でも現時点のリードを保てれば久しぶりの勝利を収める民主党候補者となりそうだ。

しかし、バイデン氏は世論調査でリードし、選挙戦終盤に大量の投資を行った州で敗北した。

最も目立つ敗北はフロリダ州とノースカロライナ州だろう。オバマ氏はノースカロライナ州で2008年に勝利しており、フロリダ州では08年と12年の両方で勝利した。

バイデン氏は最終盤にアイオワ州デモインと、オハイオ州クリーブランドも訪問した。陣営が可能性があるとみたためだが、いずれもトランプ氏が勝利した。

バイデン氏の陣営はテキサス州が接戦州となるという楽観主義を受け入れることは一度もなかった。ハリス氏をテキサス州に送り込んだものの、大金を投じることはなく、本当の接戦州なら必要となるバイデン氏の訪問もなかった。

それでも大統領選でのより良い戦いぶりが、連邦議会や州議会の選挙で民主党候補にとって追い風となる可能性もあった。だがそれは今年実現しなかった。

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