貴ガスを吸入して「1週間以内」のエベレスト登頂に挑戦、専門家からは懸念の声

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高地での低酸素を再現した低酸素テントは多くのツアー会社が提供している。参加者は遠征前にこのテントで眠る/Angela Weiss/AFP/Getty Images

高地での低酸素を再現した低酸素テントは多くのツアー会社が提供している。参加者は遠征前にこのテントで眠る/Angela Weiss/AFP/Getty Images

「システィーナ礼拝堂のスピードツアーのよう」

エドモンド・ヒラリー氏とテンジン・ノルゲイ氏が1953年に初登頂に成功して以降、エベレスト登山は劇的に変化した。今ではシェルパガイドやポーター、酸素補給、さらには最高級の装備を利用できるようになり、登山愛好家や観光客ははるかにアクセスしやすくなった。

「Everest, Inc.」の著者ウィル・コックレル氏は、90年代にガイド付き登山が始まって以降、純粋な登山という意味においてエベレストはもはや登山ではなくなってしまったと述べている。同氏によると、ガイド会社は長年、遠征期間を短縮するための革新的な方法を編み出してきたという。

従来のエベレスト登頂には6~10週間かかり、最終登頂の前に山の途中や近隣の山頂にあるキャンプを何度か巡回して高地への順応を図る。

ピーコック氏によれば、個人差はあるものの、エベレストのベースキャンプがある標高6000メートルに順応するには4週間ほどかかる。

コックレル氏は、長年にわたりガイド会社が「フラッシュ」遠征を提供していると指摘。これは、ネパールに到着する前に低酸素テントで睡眠を取ることで高地順応プロセスを加速させ、遠征期間を3~4週間に短縮するものだという。

登山の純粋主義者は人々が登頂するまでのスピードに異議を唱えるかもしれないとコックレル氏は語る。「人間が旅行や登山をする時、そのプロセスを楽しむこと、いわゆるバラの香りを嗅ぐことも目的の一つではないだろうか」

同氏は「システィーナ礼拝堂の高速ツアーに申し込むようなものだ」と言い、通常のエベレスト遠征とスピード登山は、それぞれの目的を持った全くの別物と考える方が有益だとの見方を示した。

今のところキセノンガスを利用したツアーを提供しているのは、フルテンバッハ氏の会社のみ。同氏はこの新しいスタイルの登山は他の方法よりも危険性が低いと主張する。山での滞在時間が短ければ短いほど、雪崩や落石といった危険にさらされる時間も短くなるというのがその理由だ。

ルーカス・フルテンバッハ氏は高地で何度もキセノンガスを用いているという/Courtesy Furtenbach Adventures
ルーカス・フルテンバッハ氏は高地で何度もキセノンガスを用いているという/Courtesy Furtenbach Adventures

チームは、高地トレーニングの一環として低酸素テントを使用しているほか、食事と運動の計画も立てている。

それでも、チームが成功する保証はなく、カーンズさんも自分たちのトレーニングが高地の影響を軽減できるかどうか確信が持てないと認めた。

フルテンバッハ氏は、約15万ユーロ(約2500万円)かかるこの手の登山が、顧客が選ぶメインの登山スタイルになる可能性は低いとみる。

「これがエベレスト登山の唯一の方法であり、未来の方法だと言っているわけではない。これはエベレスト登山の一つの方法であり、さまざまな登山スタイルが共存するべきだと考えている」(フルテンバッハ氏)

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