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アップル復活の立役者、英デザイナーのジョニー・アイブ氏

デザイナーのジョニー・アイブ氏

デザイナーのジョニー・アイブ氏/Matt Winkelmeyer/Getty Images

1990年代の終わりごろ、アップルは、最初期のパーソナルコンピューターを生み出したという過去の栄光にすがって生きていた。

しかし、英国人デザイナーのジョニー・アイブ氏が98年にiMacをデザインしたことですべてが変わった。アイブ氏はその後10年にわたって画期的な製品を数多く発表することになる。

そのアップルが先ごろ、約30年間同社に在籍したアイブ氏の退社を発表した。

アイブ氏は、アップルの共同設立者の1人であるスティーブ・ジョブズ氏が最も信頼したクリエイティブコラボレーターの1人で、最高デザイン責任者(CDO)として、アップルの滑らかで光り輝くデザイン的美学を確立する上で主要な役割を果たした。

キャンディーカラーの「iMac」は200万台売れた/Susan Ragan/AP
キャンディーカラーの「iMac」は200万台売れた/Susan Ragan/AP

92年に入社したアイブ氏は、アップルの業績を回復させ、同社の製品はおしゃれで、人気が高いという評判の確立に貢献し、さらに同社を時価総額世界一の企業へと成長させた。

低迷から復活する転機となったのは98年のiMacの発売だ。同年、キャンディーカラーのiMacは200万台の売り上げを記録し、アップルは95年以来の黒字となった。

「Apple Watch」(2015年)/David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images
「Apple Watch」(2015年)/David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

ロンドンのデザインミュージアムのチーフキュレーターを務めるジャスティン・マクガーク氏によると、アイブ氏のデザインが最も重大な局面を迎えたのは、2000年代の「アルミと滑らかなエッジ」の時代だという。アップルは01年にiPod、04年にiPod Mini、07年にiPhoneを相次いで発売した。

「ジョニー(アイブ氏)は、2000年代にアップルの『言語』を生み出した。それは、物事を絶対最小限まで切り詰めるという20世紀半ばのドイツ・モダニズムの哲学から生まれた、一種のミニマリスト、モダニスト的美学であり、それがハイテク業界の一種のドグマ(教義)となった。そして、(アイブ氏は)単に使いやすいだけでなく、手に持ったり触ったりしても美しい製品づくりを目指した」(マクガーク氏)

「iPod」は「クリックダイヤルを付けることでミュージックプレーヤーになった」(マクガーク氏)/Courtesy of Apple Corp. via Getty Images
「iPod」は「クリックダイヤルを付けることでミュージックプレーヤーになった」(マクガーク氏)/Courtesy of Apple Corp. via Getty Images

MacBook Pro(06年)、iPad(10年)、さらにApple Watch(15年)などのウェラブル機器はすべてアイブ氏の作品だが、マクガーク氏はiPodこそ、アイブ氏の最大の偉業と主張する。

「iPodは、ジョニー・アイブが表面に丸いクリックダイヤルを付けるまでは単なるハードドライブだったが、クリックダイヤルを付けることでミュージックプレーヤーになった」(マクガーク氏)

そして07年に、アイブ氏のiPhoneがアップルに「爆発的大成功」をもたらした、とマクガーク氏は言う。

「無論、(iPhoneの)デザインのみを褒めるわけにはいかない。タッチスクリーンもハイテク界の画期的な一歩となった。しかし、iPhoneが、人々が思わず手に持ちたいと感じる製品になったのは、彼のデザインのおかげだ」とマクガーク氏は付け加えた。

「iPad」(2006年)/Justin Sullivan/Getty Images
「iPad」(2006年)/Justin Sullivan/Getty Images

フィナンシャル・タイムズ紙によると、アイブ氏はカリフォルニア州で新会社「LoveFrom」を設立し、顧客向けのデザインやクリエーティブプロジェクトに注力するという。同社の正式な発足は2020年を予定している。

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