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シャーロック・ホームズの小説や「アイスクリーム」の歌、米国でパブリックドメインに

米国では今年、小説「シャーロック・ホームズの事件簿」などさまざまな作品がパブリックドメイン入りした

米国では今年、小説「シャーロック・ホームズの事件簿」などさまざまな作品がパブリックドメイン入りした/Atlantide Phototravel/Corbis Documentary RF/Getty Images

シャーロック・ホームズの小説、アカデミー賞の最優秀作品賞を初めて受賞した映画、アーヴィング・バーリンの往年の名曲などを含む何千もの書籍、映画、楽曲が今年、米国でパブリックドメイン(共有財産)となった。

芸術作品がパブリックドメインになるということは、その芸術作品の著作権を誰も保有していないということを意味する。誰もが著作権使用料を支払うことなく、これらの作品を放送、利用、再創造できる。また、パブリックドメインの書籍、映画、芸術作品がより容易に配布されることはよくあることで、時に無料で利用することも可能だ。

今年パブリックドメインとなった作品の中で、最も有名なものは小説「シャーロック・ホームズの事件簿」、戦時中のロマンスを描いた映画「つばさ」、アーヴィング・バーリンの音楽「踊るリッツの夜」など。「シャーロック・ホームズの事件簿」はパブリックドメインに移行したことで、登場人物の使用を巡り、コナン・ドイル財団と他の作家たちの間で繰り広げられた数十年にわたる争いが終結する。

血に飢えた「くまのプーさん」が主役のインディーホラー映画の予告編を覚えているだろうか? ピグレットやクリストファー・ロビンといった子どもたちに人気のキャラクターが悪役に仕立てあげられても、プーさんの映画を数多く制作したウォルト・ディズニー・カンパニーはどうすることもできなかった。A・A・ミルンの児童小説「くまのプーさん」が昨年、パブリックドメインとなったからである。

ヘミングウェー、ガーシュウィン、ウルフの作品もパブリックドメインに

今年、パブリックドメインに移行した最も注目すべき作品のひとつが、ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズ最後の作品を収録した「シャーロック・ホームズの事件簿」だ。米国の著作権法では、原作の登場人物がパブリックドメインになるのは、それが登場する作品がパブリックドメインになった時点だと判示している。たとえ、登場したのが、著作権が失効していないシリーズの最初の作品であったとしてもだ。だがコナン・ドイル財団は、他の作家がシャーロック・ホームズを作品に登場させることに反発することがあった。デューク大学パブリックドメイン研究センターによれば、「シャーロック・ホームズの事件簿」がパブリックドメインになったことで、財団と作家が対立するといった状況は今年で終わるという。(英国では2000年にシリーズ全作品がパブリックドメインになっている)

また、バージニア・ウルフの「灯台へ」、アーネスト・ヘミングウェーの短編集「男だけの世界」、アガサ・クリスティーの「ビッグ4」といった高名な作家の作品も今年、パブリックドメインとなった。

映画「つばさ」もパブリックドメインになった/Everett Collection
映画「つばさ」(1927年)もパブリックドメインになった/Everett Collection

映画作品では、第1回アカデミー賞で「最優秀作品」に選ばれたクララ・ボウ主演の「つばさ」(1927年)や、SFジャンルに影響を与えたフリッツ・ラング監督の代表作であるドイツのSF映画「メトロポリス」、アル・ジョルソン主演の「ジャズ・シンガー」などがパブリックドメインになった。ジャズ・シンガーは、録音されたせりふをシンクロさせた初のトーキー映画として知られているが、ジョルソンが顔を黒塗りして演じるシーンで悪名高い作品でもある。

楽曲作品では、ミュージカル「グッドニュース」の「The Best Things in Life Are Free」(「マッドメン」の主人公バート・クーパーがこの曲で旅立ったことでも有名)や、ガーシュウィン兄弟のラブソング 「‘S Wonderful」、オスカー・ハマースタイン2世のミュージカル「ショーボート」で歌われた曲、そして、フローズン・デザート好きにはうれしい「(I Scream You Scream, We All Scream for)Ice Cream」などの名曲もパブリックドメインになった。

パブリックドメインになるには

パブリックレビューに関する研究プロジェクトや電子ジャーナルを手掛ける「パブリックドメインレビュー」によると、「単一」のパブリックドメインは存在しない。代わりに複数の制度が存在し、米国の場合、今年パブリックドメインになった作品は1927年に発表されたものだ。

著作権の保護期間を「著作者の死後50年」としているニュージーランドや多くのアジア・アフリカ諸国では今年、1972年に亡くなった著作者の作品がパブリックドメインとなる。英国や多くの南米諸国では、保護期間を「死後70年」としている。

今年パブリックドメインとなった注目すべき作品

映画

「メトロポリス」 フリッツ・ラング監督

「ジャズ・シンガー」 アラン・クロスランド監督

「つばさ」 ウィリアム・A・ウェルマン監督

「下宿人」 アルフレッド・ヒッチコック監督

「キング・オブ・キングス」 セシル・B・デミル監督

「上流に向かって」 ジョン・フォード監督

書籍

「灯台へ」 バージニア・ウルフ

「男だけの世界」 アーネスト・ヘミングウェー

「シャーロック・ホームズの事件簿」 アーサー・コナン・ドイル

「ビッグ4」 アガサ・クリスティー

「ぼくたちは六歳」  A・A・ミルン

「アメリカ」 フランツ・カフカ

「見出された時」 マルセル・プルースト

「サン・ルイス・レイ橋」 ソーントン・ワイルダー

楽曲

「The Best Things in Life Are Free」(ミュージカル「グッドニュース」から) ジョージ・ガード・デシルバ、ルー・ブラウン、レイ・ヘンダーソン

「踊るリッツの夜」 アーヴィング・バーリン

「(I Scream You Scream, We All Scream for)Ice Cream」 ハワード・ジョンソン、ビリー・モル、ロバート・A・キング

「Can‘t Help Lovin’ Dat Man」「Ol‘ Man River」(ミュージカル「ショーボート」から) オスカー・ハマースタイン2世、ジェローム・カーン

「ポテト・ヘッド・ブルース、ガリー・ロー・ブルース」 ルイ・アームストロング

「‘S Wonderful」(ミュージカル「ファニーフェイス」から) ジョージ・ガーシュイン、アイラ・ガーシュウィン

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