(CNN) デンマークの首都コペンハーゲンで16日、名所の築400年の建物で火災が発生し、約56メートルの尖塔(せんとう)が崩落した。建物が炎に包まれる中、消防当局の隊員や市民らが内部にある絵画などの美術品、工芸品を運び出した。
建物は17世紀に建てられた旧証券取引所。デンマーク商工会議所が建物を所有・使用しており、このところ改修工事が行われていた。
同商工会議所のミケルセン最高経営責任者(CEO)は、自身や同僚がいかに動揺しているか言い表せないと告白。400年の歴史を持つ文化が炎に包まれるのは大変な災難だとの見解を示した。
火災は通勤時間帯と重なった。通行人らががく然としながら見守る中、建物の象徴だった絡み合う4頭の龍の尾の形をした尖塔が崩落した。
居合わせた市民の中には当局隊員や商議所の職員らと共に燃えている建物の内部に入り、大型の絵画や家具などの運び出しを手伝った人もいた。商議所によると、難を逃れたものの中には、デンマークの画家ペーダー・セベリン・クロイヤーの1895年の作品も含まれているという。
ポールセン副首相は、「デンマークにおけるノートルダム大聖堂火災」と、2019年の火災で大きな被害が出たフランス・パリの同大聖堂になぞらえた。
消防当局がCNNに明らかにしたところによると、火災は午前8時半ごろに発生し、同11時までに建物の半分近くが焼けた。午後になっても火災は続いた。
同商議所は「この悲劇の大きさに言葉もない」「国にとって悲しい日だ」「残念ながら損害額は非常に高額だ」などと述べた。
コペンハーゲンの消防・救急サービス部門の幹部は、建物内の絵画や家具を多数搬出しようと努力したと説明。火災の原因を推定するのは時期尚早だとした。
警察によると現場周辺を避けるよう指示が出ており、これまでのところ負傷者はいない。火災発生時、建物内には人がいたが、全員避難したという。軍要員も現場に駆けつけ、消火作業を支援したと、警察の広報担当者は述べた。
炎に包まれる建物を目の当たりにして衝撃を受ける通行人ら/Ida Marie/Ritzau Scanpix/AFP/Getty Images
火災に遭った建物から絵画を運び出す人々/Ida Marie Odgaard/Ritzau Scanpix/AFP/Getty Images
デンマークのフレデリクセン首相は「デンマークの歴史の一部」が燃えたとし、建物が持つ文化的な価値は「かけがえのないものだ」との見解を示した。
旧証券取引所の建物は、17世紀からデンマークのビジネスの中心に位置してきた。
クリスチャンスボー城から徒歩数分の距離に立地するこの建物の歴史は1625年に遡(さかのぼ)る。当時この国を統治したクリスチャン4世の要請を受け、オランダ・ルネサンス様式で建てられた。最近は改修中で、ファサードは足場などで覆われていた。
エンゲルシュミット文化相は400年の歴史を持つ文化遺産が損傷したとしつつ、X(旧ツイッター)への投稿で、商議所の職員や救急隊員、通行人らが協力して美術品などを燃えさかる建物から運び出したことに感銘を受けたと語った。
火災に見舞われる前の旧証券取引所の外観/Luke MacGregor/Bloomberg/Getty Images
緊急サービス要員らは火を抑え込もうとしたものの、火災はエレベーターの昇降路を通じて全ての階に広がった。
コペンハーゲンの消防幹部は、炎が建物内で「激しく」燃えていると語った。政府系のテレビ局TV2が報じた。
同局によれば40人の消防士が建物に入り、貴重品を運び出した。
消防幹部は、現場の責任者らが炎の危険性を認識していると説明。屋根の一部を除去して消火する必要があると述べた。
具体的には、機械を使って銅製の屋根を取り除くと付け加えた。屋根があると消火用の水を跳ね返してしまうためだという。