トンガ噴火、五輪プール5.8万杯分の水を大気に放出 米NASA

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今年1月にトンガで起きた噴火で、オリンピックサイズのプール5万8000杯分に相当する水蒸気が成層圏に到達したことがわかった/Joshua Stevens/NASA Earth Observatory

今年1月にトンガで起きた噴火で、オリンピックサイズのプール5万8000杯分に相当する水蒸気が成層圏に到達したことがわかった/Joshua Stevens/NASA Earth Observatory

(CNN) 地球上で最も強力な火山噴火の一つとなった今年1月のトンガでの噴火が、大量の水蒸気を大気中に放出し、一時的に地表を暖める可能性があることが米航空宇宙局(NASA)の衛星データ分析で明らかになった。

南太平洋の島国トンガの首都から北に65キロの海底にあるフンガトンガ・フンガハーパイ火山の1月15日の噴火は、世界中に2回波及した津波と衝撃波を引き起こした。

噴火では地表から12〜53キロ上空にある成層圏へと水蒸気が上った。NASAの衛星が検出したところによると、その水蒸気はオリンピックサイズのプール5万8000杯分に相当する。

検出はNASAの人工衛星「オーラ」に搭載された装置「マイクロ波リムサウンダー(MLS)」によって行われた。オーラは水蒸気、オゾン、その他の大気中のガスを測定する。

科学者たちは、噴火によって成層圏に146テラグラムの水蒸気が放出されたと推測する。1テラグラムは1兆グラムで、146テラグラムは成層圏にすでに存在していた水の10%に相当する。

これは1991年にフィリピンのピナトゥボ山が噴火した後に成層圏に到達した水蒸気量のほぼ4倍だ。

水蒸気の調査結果に関するこの研究は先月、地球科学ジャーナル「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」で発表された。

米南カリフォルニアにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)の大気科学者で著者のルイス・ミラン氏は「このようなものは見たことがなかった。測定値が信頼できるものであることを確認するために、水蒸気の柱の中の全ての値を慎重に調べる必要があった」と声明で述べた。

MLSは地球大気からのマイクロ波の自然信号を測定することができ、厚い灰の雲を通しても検出が可能だ。

「MLSは水蒸気の噴出が起こったときにそれを捕らえるのに十分な密度で観測できるただ一つの機器であり、火山が放出した灰の影響を受けなかった唯一の機器でもある」とミラン氏は話した。

オーラは2004年に打ち上げられて以来、大気圏上空に大量の水蒸気を放出した2つの火山噴火を測定したのみだ。しかし、08年のアラスカ州のカサトチ火山の噴火と15年のチリのカルブコ火山の噴火の水蒸気はかなり早く消散した。

通常、ピナトゥボ火山や1883年にインドネシアで起きたクラカタウ火山の噴火のような強力な噴火は、噴出したガス、粉じん、灰が太陽光を宇宙空間に反射するため地球の表面温度を低下させる。この「火山の冬」は1815年にインドネシアのタンボラ山噴火の後に起こり、翌年は「夏のない年」となった。

トンガの噴火は大気中に放出された水蒸気が熱を閉じ込め、地表の気温を上昇させる可能性があるという点で異なっていた。研究者によると、余分な水蒸気は数年間成層圏にとどまる可能性があるという。

また、成層圏に水蒸気が増えると化学反応が起こり、一時的に地球を守るオゾンの破壊につながる可能性もある。

幸いにも水蒸気による温暖化効果は小さく一時的なもので、余分な水蒸気が減少するにつれて消滅すると予想される。研究者たちは、気候危機による既存の状況を悪化させるほどのものではないと考えている。

研究者らはまた、水蒸気の量が多かった主な原因は火山のカルデラが海面下150メートルにあることだと考えている。

カルデラがかなり深かったら噴火が弱まり、浅すぎたら噴出したマグマによって温められた海水の量が成層圏に到達した量と一致しなかっただろうと研究者は述べている。

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