ウシの血液中の抗体で新型コロナ薬、臨床試験目指す 米バイオ企業
(CNN) 米サウスダコタ州のバイオ企業が、遺伝子操作したウシに新型コロナウイルスのヒト抗体を作らせて治療や予防に使う薬の開発に取り組んでいる。来月には臨床試験に入ることを目指して手続きを進めているという。
SABバイオセラピューティクスのエディー・サリバン最高経営責任者(CEO)によると、ウシの血液中にできた抗体は、実験室で新型ウイルスを無力化する作用が確認された。臨床試験の規模や期間は公表されていない。
同社はウシの皮膚から採取した細胞の遺伝子を操作して人間の抗体を作らせることに成功し、これまでに多数のクローンウシを作製。そのうち一部に新型ウイルスを注入してできた抗体から、「SAB185」と呼ばれる薬をすでに数百回分生産したという。
感染症から回復した患者の抗体を治療に使う「血清療法」は古くから知られているが、同社によるとウシを使うことには複数の利点がある。まず、ウシの免疫力はもともと人間に比べて強いうえ、ウイルスの注入を繰り返すことでさらに強化することができる。
またウシの体は大きいため、提供できる血液も多い。さらに、人間が血液成分を提供できるのは月1回にとどまるのに対し、ウシは月に3回まで可能だ。
最近の研究で、同社がウシの血液から作った薬に含まれる抗体は、人間の患者から検出されるレベルの4倍に上るとの結果も報告されたという。
遺伝子操作した動物に新型ウイルスのヒト抗体を作らせる研究では、米バイオ医薬品大手リジェネロン・ファーマシューティカルズが先週、マウスを使って開発した薬の臨床試験を始めたと発表。今夏中に供給を開始できる可能性があるとの見通しを示していた。