武漢研究所につながる資金も対象か、米厚生省がNIH助成金を調査へ

武漢ウイルス学研究所の前に立つ警備員=2021年2月3日、中国湖北省武漢市/Koki Kataoka/The Yomiuri Shimbun/AP

2021.06.17 Thu posted at 12:36 JST

(CNN) 米厚生省の監察官は15日、国立衛生研究所(NIH)による研究助成プログラムの運用や監督のあり方を調査する方針を明らかにした。このプログラムには、共和党議員が着目する中国・武漢の研究所関連の資金も含まれている公算が大きい。

共和党はこのところ、NIHと非営利団体「エコヘルス・アライアンス」との関係を追及している。エコヘルス・アライアンスは武漢ウイルス学研究所の一部の研究に資金提供している。共和党はNIH傘下の国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長を批判し、政治的な点数を稼ぐ狙いがある。

米国などでは現在、新型コロナウイルスの起源や武漢ウイルス学研究所の役割をめぐる疑問が再燃している。

厚生省監察総監室の報道責任者はCNNに対し、「われわれはNIH助成金の法令順守と監督に関する利害関係者の懸念を共有している。この問題については以前から注視しており、助成金プログラムの健全性を脅かしうる重要問題と認識している」と述べた。

NIHからの資金のうち約8割は研究助成に充てられ、外国組織への助成金も含まれている。監察官の調査では、こうした助成金に対する監督のあり方を調べ、受け取り手による助成金の使用や管理が連邦政府の要件を順守しているか確認する方針。

匿名で取材に応じたNIH当局者の1人は、調査には「政治的」な性質があるとしつつも、最終的には良いことであり、NIHへの疑惑の払しょくにつながるだろうとの見方を示した。

中国湖北省武漢市の武漢ウイルス学研究所=6月15日

ファウチ氏は今年の議会証言で、NIHがエコヘルス・アライアンスに拠出した資金について、数十万ドルが武漢研究所のコウモリコロナウイルス研究に充てられたことを確認した。これを受け、NIHとエコヘルス・アライアンスの関係に疑問を投げかける声が強まっている。

ファウチ氏を巡っては、CNNを含む報道機関が先ごろファウチ氏がやりとりしたメールを報道。エコヘルス・アライアンスの幹部が昨年4月にファウチ氏に宛てたメールには、科学的な証拠からはコロナの自然起源が支持され、研究所由来は支持されないとファウチ氏が公言してくれたことに謝意を示す内容があった。

ファウチ氏はこのメールは誤解されており、同氏が武漢研究所の関係者と癒着しているとの主張を「ばかげている」と批判。コロナの起源については、動物から人間への感染が最も可能性が高いとの見方を示しつつも、他の発生源の可能性についても排除せず、研究所から漏れた可能性もありうるとの見解を示していた。

米情報機関の最近の報告書では、武漢ウイルス学研究所の研究者数人が2019年11月に体調不良を訴え、入院していたことが判明。体調不良の要因は不明で、研究者らが新型コロナウイルスに感染したことを示す情報はない。同研究所は報告書の内容を強く否定し、いわゆる「研究所流出説」を押し出す目的のうそと反発している。

新型コロナウイルスの世界的流行がどのように始まったのかについては諸説ある。第一に、自然界で発生したウイルスが動物から人間にうつったとの説。第二に、こうした自然由来のウイルスが実験室で研究され、誤って誰かに感染したとの説。第三の説として、研究者の大半は疑問視しているものの、実験室で人工合成されたウイルスが何らかの形で漏えいしたとの説もある。

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