香港と中国結ぶ世界最長の海上大橋が開通、本土との関係やイルカ保護めぐり批判も

香港と中国本土を結ぶ世界最長の海上大橋が開通/ANTHONY WALLACE/AFP/AFP/Getty Images

2018.10.22 Mon posted at 18:30 JST

(CNN) 香港と中国本土の珠海やマカオを結ぶ世界最長の海上大橋「港珠澳大橋」が完成し、23日に開通式が行われる。

同橋は米ドル換算で200億ドル(約2兆2500億円)の総工費をかけ、9年がかりで完成した。全長は55キロ。当初は2016年に開通予定だったが、何度も遅れて今年までずれ込んだ。

珠海で行われる開通式には中国の習近平(シーチンピン)国家主席のほか、香港やマカオのトップが出席する見通し。24日から一般に公開される。

推進派によると、橋の開通によって、これまで3時間かかっていた都市間の移動時間が30分に短縮され、通勤客や観光客の移動が便利になる。

ただし香港住民の自家用車は特別許可がない限り、橋を渡ることはできない。住民は香港側の港にある駐車場に自家用車を停めて、シャトルバスやハイヤーに乗り換える必要がある。シャトルバスの料金は片道8~10ドル。

同プロジェクトは香港では強い批判の的になっていた。香港からマカオや珠海への交通が便利になることに対する需要はほとんどなく、中国本土からの観光客が香港に押し寄せることも懸念されている。

さらに、中国政府が香港に対する統制を強める目的で、この橋を利用しようとしているという批判もある。

橋はマグニチュード8の地震やスーパー台風、超大型貨物船による衝突にも耐えられる設計で、使われた鉄鋼の量は40万トンと、米サンフランシスコにあるゴールデンゲートブリッジの4.5倍に上る。

交通量の多い珠江デルタ地域の海上輸送路を避けるため、6.7キロは海底トンネルを通過する。海底トンネルはそれぞれ面積10万平方メートルの人工島2島を結ぶ。

建設には米ゴールデンゲートブリッジの4.5倍に相当する鉄鋼が使われた

珠江デルタは絶滅危惧種に指定されたシナウスイロイルカの生息地でもある。一帯の生息地は、香港などによる大規模な埋め立てによって破壊されてきた。

野生生物保護の専門家は、架橋や香港空港の拡張工事によって、シナウスイロイルカが絶滅に追い込まれる恐れもあると危惧していた。

橋の建設が環境に及ぼす影響が指摘されたことを受け、香港政府はイルカなどの海洋生物保護を目的とした海洋公園の創設を表明。しかし専門家からは、橋建設の影響を抑えるためには既に手遅れだと指摘する声も出ている。

橋の建設は安全基準を巡っても一般からの強い批判にさらされた。建設工事で死亡した作業員は7人、負傷者は275人に上る。香港当局は死者が相次いだ理由について、人手不足が原因だったと説明しており、裁判所は今年に入り、下請け業者数社に罰金の支払いを命じていた。

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