ウクライナ・ザポリージャ原発、内部の様子は 核惨事の懸念も

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ザポリージャ原子力発電所をめぐり、核の惨事が起こるとの懸念が出ている/Alexander Ermochenko/Reuters

ザポリージャ原子力発電所をめぐり、核の惨事が起こるとの懸念が出ている/Alexander Ermochenko/Reuters

キーウ(CNN) ウクライナ南東部のドニプロ川河岸、ロシア占領下の街エネルホダルに住むオルガさんは、毎朝自宅を出て勤務先のザポリージャ原子力発電所へ向かう。

今、欧州最大級の原子力発電施設に世界中から懸念が寄せられている。連日にわたる砲撃の増加がきっかけで、国際専門家を施設に派遣せよという呼びかけが起こり、原子力事故の可能性を危ぶむ声が高まっているためだ。

ウクライナ政府はロシア軍を繰り返し非難してきた。3月に発電所を占拠したロシア軍は大型兵器を施設内に保管し、ウクライナ側が反撃すれば6基の原子炉に命中する危険を回避できないことを承知の上で、発電所を盾に攻撃を行っているというのだ。どれかひとつに命中すれば、大惨事を引き起こしかねない。一方でロシア政府はウクライナ軍が施設を標的にしていると主張。双方とも、核によるテロ行為を犯しているのは向こうだと非難合戦を展開している。

オルガさんとウクライナ人の同僚は今も発電所で勤務している。彼らにとって、原子力事故の亡霊は単なる悪夢ではない。日々起きている現実だ。

「まるで眠ったまま夢を見ているようだ」。先日CNNとの電話インタビューに応じたオルガさんは、勤務中に味わっている終わりなき現実離れした状況についてこう表現した。発電所はロシア軍に占拠されているものの、今もウクライナ人の技術者を中心に運転されている。

原子力施設の占拠から数カ月、遅まきながらもウクライナ人の従業員が職場に戻ってきた。崩壊しかけた部屋で業務を行い、ロシア兵と遭遇するのは入所の際に2カ所の検問所を通過する時だけだ。

「占拠の後、発電所で働いていたのは作業員だけだった。たくさんの部屋や窓が壊れ、焼け焦げていた。そのうちロシア側も、特殊な業務に当たるスタッフを徐々に呼び戻し始めた」とオルガさんは言う。身元が特定されないよう名前は変えてある。

「現在は残った一部のスタッフが働いている。全従業員の約35~40%がいなくなった」(オルガさん)

少ない人員と戦闘で、労働環境は次第におぼつかなくなっている。

11日深夜に発電所付近で再び爆撃が起きると、ウクライナとロシアは非難の応酬を再開した。国連が双方に発電所付近での戦闘停止を呼びかけ、最悪の事態を警告してからわずか数時間後の出来事だった。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は声明で、「残念なことに、この数日間は戦闘の縮小どころか、さらに憂慮すべき出来事が報告されている。もしこの状態のまま戦闘が続けば大惨事につながりかねない。発電所から兵士や軍事装備を一切撤去し、今後も再配備しないよう強く求める」と述べた。

11日にニューヨークで開かれた国連安全保障理事会では国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長も発言し、最近の攻撃で発電所の一部が破壊され「受け入れがたい」放射線漏れのリスクが高まっていると述べた。また現場の状況が「極めて急速に悪化している」ことをふまえ、専門家チームの入所を至急受け入れるよう要請した。

「今は深刻かつ重要な時だ。IAEAは可能な限り速やかにザポリージャで任務を行う必要がある」(グロッシ事務局長)

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