トランプ氏のコロナ治療、一般患者との違いは?

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退院後、ホワイトハウス前でマスクを外すトランプ大統領/Win McNamee/Getty Images North America/Getty Images

退院後、ホワイトハウス前でマスクを外すトランプ大統領/Win McNamee/Getty Images North America/Getty Images

(CNN) もしあなたが新型コロナウイルスに感染しても、トランプ米大統領と同じ治療を施してもらえる見込みはない。

一国のリーダーに特別な措置を適用したり、可能な限り高度な治療を受けさせるのは当然のことかもしれない。しかし、今回トランプ氏が受けている治療の一部は、一般国民にはそもそも提供すらされていないものだ。

トランプ氏が大勢の支持者に向かって「コロナを恐れるな」と訴えたとき、こうした事実は見落とされていたのではないだろうか。

「20年前よりも体調がいい」。トランプ氏は5日にそうツイートしたが、コロナに感染した他の米国民が自分と同じ医薬品や治療法にアクセスできない点には触れなかった。

「地球上で唯一」の投薬

2日に入院する前、トランプ氏には米製薬大手リジェネロンが開発した実験段階の抗体治療薬が投与された。ウイルスレベルの低減に効果があるとされ、非入院患者275人を対象に行った試験で有望な結果が出ていた医薬品だ。

しかし同薬には米食品医薬品局(FDA)からの 緊急使用許可が出ていなかった。リジェネロンは、トランプ氏の主治医から未承認薬の人道的使用を認める「コンパッショネート使用」の要請を受けたうえでこれを投与したと明らかにした。

多くの人々にとって、未承認薬使用のための 「コンパッショネート使用」を要請するには長く複雑な手続きが必要とされるが、ホワイトハウスの報道官や主治医によると、トランプ氏への投与は陽性判明の翌日に行われたという。

実験段階にある抗体治療薬に加え、トランプ氏には抗ウイルス薬「レムデシビル」とステロイド薬「デキサメタゾン」も投与された。

ジョージワシントン大学の医学教授、ジョナサン・ライナー博士は「トランプ大統領はおそらく、これらの医薬品の組み合わせによる治療を受けた地球上で唯一の患者だろう」と指摘した。

レムデシビルについてはFDAが新型コロナウイルス感染症で入院中の重症患者に対する緊急使用を許可。臨床試験で5日間使用したところ、一部の患者で早期の回復が確認できたという。

レムデシビルの投与は点滴を通じて行うため、通常患者は入院が必要となるが、トランプ氏は5日の夕方に退院した。米国の一般家庭と違ってホワイトハウス内には医療チームが組織されており、専属のショーン・コンリー医師によれば、トランプ氏に対して世界レベルの医療ケアを施す態勢が整っているという。

デキサメタゾンは安価で広く出回っている薬だが、免疫反応を抑制するため、一般的に重症化した患者以外への投与は推奨されていない。前出のライナー博士はこの点に言及し、主治医らがトランプ氏の容体を非常に危険視していたことを示すものだと述べた。

コンリー医師はトランプ氏の健康状態について、退院できるほど良好だったと明言しながらも、再び悪化する可能性を懸念していることを認めた。

充実の検査アクセス

一般の米国民は現在に至るまで、新型コロナウイルスの検査をなかなか受けられずに苦慮している。検査を受けても結果が分かるまでには数日を要するのが実情だ。

一方トランプ氏については、ホワイトハウスのマクナニー報道官が7月、「誰よりも検査を受けている。1日に複数回の頻度で」と明らかにしていた。ただトランプ氏本人はこの後、検査のペースを「2~3日ごとに1回」と説明。1日に2回受けた認識はないとしたうえで「そういうことも起こりうるだろうが」と付け加えた。

ホワイトハウスは先週、迅速検査キット計1億5000万回分を全米配布すると発表したが、計画自体は8月の時点で掲げていたものだった。

場合によっては検査を受けても偽の陰性結果が出る可能性があるが、それでも頻繁に検査を行えることには複数のメリットが存在する。先週、トランプ氏は最側近の1人に陽性反応が出た直後に検査を受け、自らの陽性が判明すると即座に自己隔離のプロセスに入ることができた。

完治まで長期化も

一般国民と異なる環境で治療を行い、退院したトランプ氏だが、これで新型コロナとの戦いが終わったわけではない。

緊急医療医師のリアーナ・ウェン博士によれば、患者の中には退院後、自宅で体調が悪化して再入院するケースもみられる。実際のところ集中治療室(ICU)に入る患者は、最初に症状が現れてから重症化するまで平均10~12日かかるという。

「大統領の健康は現時点で良好ということで、それが事実なら胸をなでおろしてよいだろう。とはいえ、まだ安心はできない。この先も一定の期間は様子を見なくてはならないからだ」(ウェン博士)

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