「罪悪感のない」長距離フライト実現へ、脱炭素化に向けた航空業界の取り組みは

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エアバスが発表したコンセプト航空機/Airbus

エアバスが発表したコンセプト航空機/Airbus

(CNN) 航空業界は他の多くの産業と同様、2050年までに地球温暖化の原因となる汚染の削減を目指している。だが、そのための明確な方法はなく、目標達成のめどが立っていないのが現状だ。

同業界は現在、世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約2.5%を占めているが、他の温室効果ガスの排出や、ジェットエンジンによる飛行機雲の形成によって、実際の気候への影響はさらに大きい。一方で、米航空機大手ボーイングによると、空の旅の需要は着実に増加し、42年までに世界の民間航空機の台数は倍増することが予測されている。

「最も一般的な指標であるCO2排出量からみると、空の旅の問題点は、需要が伸びているだけでなく、脱炭素化が非常に難しいことだ。そのため、他の業界がより早く排出量を削減するにつれて、割当量が増えると予想される」と、コンサルティング会社アビエーションバリューズで商業アナリスト部門の責任者を務めるゲリー・クリクロー氏は述べている。「脱炭素化問題の核心は、世界の航空業界が必要とする規模、コスト、安全性、信頼性においてジェット燃料のエネルギー密度を再現できるだけの非炭素エネルギー源がまだ見つかっていないことだ」

中・長距離フライトは、航空業界によるCO2排出量の73%を占め、脱炭素化を妨げる最大の原因となっている。同業界が環境に与える影響を監視する英国の非営利団体、航空環境連盟(AEF)によると、ロンドン―バンコク間の往復フライトで排出されるCO2の量は、1年間ビーガン(完全菜食主義)の食生活を続けて節約できる排出量を上回る可能性があるという。

気候危機が続く中、長距離フライトに対する懸念が旅行の選択にも影響を及ぼし始め、多くの人が環境破壊のより少ない、近場への旅行を自発的に選ぶようになってきた。だが、持続可能な「罪悪感のない」長距離フライトが果たして実現可能なのかと考えることは、ごく自然なことだ。

持続可能な航空燃料(SAF)の模索

航空業界の具体的な目標は、50年までにネットゼロ(温室効果ガスの実質排出ゼロ)を達成すること。つまり、地球温暖化を引き起こす汚染物質を可能な限り削減し、残留物がある場合には、それらを大気中から除去するというものだ。だが、どうやって目標を達成できるのか。

米ミシガン大学のゴクチン・チナー教授(航空宇宙工学)は「我々が検討している技術は主にSAFで、現在使用されている量はごくわずか。もう少し進んだものとして検討できるのが電気と水素の2種類だ」と話した。

SAFは、CO2排出量を最大80%抑制できる代替ジェット燃料の一種。通常、大気からCO2を吸収していた植物を原料とするため、カーボンフットプリント(原材料調達から廃棄までの過程で排出されるCO2の量)が低い。SAFを燃焼させるとCO2が大気中に戻される一方、化石燃料からできた従来のジェット燃料であるケロシンを燃焼させると、これまで蓄積されていたCO2が放出される。

SAFは、藻類、水素、大気から直接回収したCO2など、いくつかの供給源から生成できるが、チナー氏によると、短期的には使用済み食用油などの廃棄物から作られるSAFが最も有望だという。

「使用済みの食用油を、化学的処理を通じて炭化水素に変えることができる」「ジェット燃料も炭化水素であり、この類似性によって、既存のエンジンに改造を施すことなくSAFを使用することが可能だ」(チナー氏)

国際航空運送協会(IATA)は、SAFが50年までに航空機による環境汚染を65%削減できるかもしれないと期待しているものの、現在使用されている全ジェット燃料のうちSAFが占める割合はわずか0.1%にすぎない。普及が遅れている理由は、SAFの価格が通常のジェット燃料よりも1.5~6倍高いからだ。価格を引き下げるには、大幅な増産か政治的な圧力をかけるしかないが、いずれも時間を要するだろう。

もう一つの問題は、現在の規制によって、ジェットエンジンが100%SAFで稼働することが禁止されていることだ。

「我々はパートナーシップを結び、政策に影響を与えようとしているが、現在SAFを混合できる含有率の上限は50%」とボーイングの環境持続可能性部門でディレクターを務めるライアン・フォーセット氏は説明する。「SAFの素晴らしい点は、最大50%までの使用量で『ドロップイン』燃料と証明され、改造の必要がないことだ。今やるべきことはSAFの配合率を上げることを検討すること。それにより改造が不要、もしくは特定のコンポーネントの改造がいくらか必要という答えが出るかもしれない」

民間航空機の市場シェア90%以上を占めるボーイングとエアバスは、30年までに両社が製造するすべての新型機が100%SAFに対応することをCNNに認めた。現在では利用可能な技術のテストが行われており、23年11月には英ヴァージン・アトランティック航空が、100%SAFを使用し、史上初となるロンドン―ニューヨーク間の大西洋横断飛行を実施した。

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