Design

将来の海面上昇に備え?、手軽に装着できる「人工のエラ」登場

手軽に装着できる「人工のエラ」登場

大がかりな装備の助けを借りなくても、水中で魚のように呼吸できる日が来るかもしれない――デザイナーの亀井潤氏が手がける「AMPHIBIO」は、特殊な形状をしたベストとマスクをアクセサリーのように手軽に装着するだけで水中での呼吸を可能にする。まさに「人工のエラ」だ。

亀井氏は英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)と東京大学生産技術研究所が共同で設立したデザインプロジェクトと協力し、「AMPHIBIO」を開発した。ベスト部分とマスク部分からなる「AMPHIBIO」の素材は軽量で、撥水(はっすい)性が極めて高い。加工には3Dプリンターの技術を活用した。

ベストとマスクからなる「人工のエラ」の試作モデル Credit: Photography by Mikito Tateisi
ベストとマスクからなる「人工のエラ」の試作モデル Credit: Photography by Mikito Tateisi

エラの役割を果たす仕組みは、水生昆虫の持つ特徴がヒントになった。素材の表面に開いた多数の細かい穴を通じて周囲の水から酸素を取り込み、二酸化炭素を放出する。

多孔質の素材が水中の酸素を取り込み、二酸化炭素を放出する Credit: Jun Kamei
多孔質の素材が水中の酸素を取り込み、二酸化炭素を放出する Credit: Jun Kamei

デザインを思い立ったきっかけは、環境問題への関心だった。地球温暖化に伴い海面が上昇し、大都市が水没する未来に着想を得たという。

水没した大聖堂の中を、「AMPHIBIO」を装着して泳ぐ想像図 Credit: Rendering by Kathryn Strudwick
水没した大聖堂の中を、「AMPHIBIO」を装着して泳ぐ想像図 Credit: Rendering by Kathryn Strudwick

現時点で「AMPHIBIO」はまだ試作段階にあり、表面積や気体の入れ替えの速度を人間が使用できる水準まで引き上げる必要があると亀井氏は話す。

将来的には、水没した大都市で生き残るためだけでなく、気軽に潜水を楽しむ目的でも使用してもらいたい考えだ。

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