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AI生成画像が写真コンテスト入賞、出品のアーティストが受賞辞退

コンテストで入賞を果たした、AI生成画像で制作した写真作品

コンテストで入賞を果たした、AI生成画像で制作した写真作品/Boris Eldagsen

権威ある国際写真コンテストで入賞したドイツ人アーティストが、出品したのは人工知能(AI)で制作した作品だったと打ち明けて、受賞を辞退した。

ベルリン在住のボリス・エルダグセンさんが出品した作品「Pseudomnesia: The Electrician」は、今年の「ソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワード」でクリエーティブ部門賞を受賞した。

白黒の作品には世代の違う2人の女性が描かれ、年上の女性が後ろから若い方の女性に寄りかかっているように見える。

主催者は、AIの関与は認識していたと述べ、自分たちをあざむこうとする「意図的な」試みがあったと説明した。

エルダグセンさんは自身の行動について、この問題について対話が始まるきっかけとなり、「AIで生成された画像のための別のコンテスト」につながることを期待すると語った。

エルダグセンさんは自身のウェブサイトに掲載した声明の中で、AIで生成された画像に関して対話を始めるきっかけとしてもらうため、「生意気なサル」になったと述べている。

「私の画像が選ばれ、これが歴史的な瞬間となったことに感謝します。これは権威ある国際写真コンテストで受賞した初のAI生成画像です。これがAIで生成されたと分かった人、あるいは疑った人はどれくらいいたでしょうか? 何かおかしいと思いませんか?」

「AI画像と写真がこのような賞で互いに競争すべきではありません。これは異なる存在です。AIは写真ではありません。従って私は受賞を辞退します」

エルダグセンさんはさらに、「生意気なサル」として出品したのは、コンテスト側に「AI画像の応募に対する用意があるか」どうかを見極めるためだったと述べ、「彼らは(用意が)できていない」とした。

「大切なのは勝つことではない」

エルダグセンさんは18日、「写真の腕やノウハウを持たなくても写真のように見える画像を制作できるという展開を受け、今この瞬間、写真界は不意を突かれている」とCNNに語った。

AIは多くの写真家をおびえさせ、仕事を失う不安を感じさせているとエルダグセンさんは言い、「そうなるだろう」と予想する。

その上で、自分の意図はトラブルを引き起こすことではなく、重要な対話を始めてもらうことにあると強調した。

「大切なのは何かに勝つことではない」とエルダグセンさんは言う。「ただ、認識しているかどうか見極めるためにテストを行った。ハッカーが悪用目的ではなく、弱点があるかどうか見極めるため、システムをハッキングするようなものだ」

ウェブサイトに掲載された声明によれば、AIの関与については主催者に告げていたという。

主催者によると、2023年のコンテストには、史上最多の応募があった。応募作品は41万5000点を超え、うち18万点あまりはプロフェッショナル部門への応募だった。

各部門ごとに3人が最終選考に残り、5~7人が選考を通過した。選ばれた作品は30カ国以上の写真家が撮影したもので、中国の廃棄されたセメント工場やソマリアの魚市場などさまざまな場所で撮影されていた。

「欺こうとする」主張

コンテストを主催するワールド・フォトグラフィー・オーガニゼーションが18日、CNNに寄せた声明によると、3月14日にエルダグセンさんの部門賞授賞を発表する前にエルダグセンさんと交わしたやり取りの中で、これがAIを使って「共同制作」した作品だったことを本人が確認していたという。

「オープンコンペのクリエーティブ部門では、青写真やレイヨグラフから最先端のデジタル実践に至るまで、画像制作に対するさまざまな実験的アプローチを歓迎する」と同団体は説明する。

「従って、ボリスとのやり取りや保証書の提出を受け、彼の作品はこの部門の基準を満たすと判断し、彼の参加を支持した。さらに、このテーマについてさらに深い会話を交わすことを楽しみにしており、我々のウェブサイトに彼との専用のQ&Aを掲載する準備をすることで、ボリスの対話の願いを歓迎した」

「彼(エルダグセンさん)が受賞の辞退を決めた今、我々は彼との活動を中止し、彼の希望に沿って彼をコンテストから除外した。彼の行動と、我々を欺こうとする意図的な試みに言及したその後の声明、それによって彼の保証が無効になったことを考えると、もはや彼との意味のある建設的な対話はできなくなったと感じている」

同団体は、「この主題の重要性と、それが現代の画像制作に与える影響」については認識しているとした上で、こう言い添えた。

「AI実践の要素は、画像制作の芸術的文脈においては関係があるものの、本賞はこれまでもこれからも、写真家とこの媒体に取り組むアーティストの卓越性と手腕を表彰するプラットフォームであり続ける」

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