Arts

新アッシリア帝国時代のレリーフ、ISISに破壊された遺跡で発見 イラク

マシュキ門で見つかったレリーフを発掘するイラクの作業員

マシュキ門で見つかったレリーフを発掘するイラクの作業員/Zaid al-Obeidi/AFP/Getty Images

イラク北部で考古学者のチームが、今から約2700年前の新アッシリア帝国時代に彫られた見事な岩面彫刻を発見した。

この岩面彫刻は、イラク北部の都市モスルの東に位置する都市遺跡ニネベで、2016年に過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)によって破壊されたマシュキ門の修復作業を行っていた米国とイラクの合同発掘チームによって発見された。

かつてイラクには、世界最古の都市や、バビロニア人、シュメール人、アッシリア人といった最古の文明の一部が存在した。

紀元前700年ごろ、新アッシリア帝国の王セナケリブはニネベを首都に定め、その入り口を守るためにマシュキ門(神の門を意味する)を築いた。

これらの岩面彫刻はISISの戦闘員が古代のマシュキ門を破壊した後で見つかった/Zaid al-Obeidi/AFP/Getty Images
これらの岩面彫刻はISISの戦闘員が古代のマシュキ門を破壊した後で見つかった/Zaid al-Obeidi/AFP/Getty Images

しかし、この地域では多くの歴史的に重要な遺跡が長期にわたる軍事紛争や文化的破壊行為の犠牲となり、マシュキ門も例外ではなかった。

マシュキ門は1970年代に再建されたが、ISISがイラクを占領中に同組織の兵士らがブルドーザーで破壊した。

米ペンシルベニア大学の考古学者マイケル・ダンティ氏は、ISISがイラクを占領中「同国の文化遺産を保存・保護するプロジェクトを指揮した」とCNNに述べ、さらに「ISISが(マシュキ門を)故意に破壊した際、他の遺跡とともに報告した」と付け加えた。

ダンティ氏が指揮する「イラク遺産安定化プログラム」がマシュキ門の修復に着手した時、彼らはある発見をした。ダンティ氏はこの発見について「あまりに珍しく、想像すらできなかった」と語った。

マシュキ門の遺跡の下に埋まっていたのは、華麗な彫刻が施された7枚の大理石のスラブ(石板)だった。スラブには矢を放つアッシリア兵のほかヤシの木、ザクロ、イチジクが描かれていた。これらは全てセナケリブ王の宮殿に属するものだ。

ダンティ氏は「我々は感動のあまり、ほとんど言葉を失った。まさに夢のようだった」と述べ、「まさか市門の中でセナケリブ王のレリーフを発見するとは誰も予想していなかった」と付け加えた。

ダンティ氏によると、60年代と70年代にもこの場所で遺跡の発掘が行われたが、この特定の部屋は発掘されなかったという。

マシュキ門は破壊されたが、「これらの石板は地中に埋まっていたおかげで破壊されずに済んだ」とダンティ氏は述べた。

考古学者らはレリーフの発見に心を打たれた/Zaid al-Obeidi/AFP/Getty Images
考古学者らはレリーフの発見に心を打たれた/Zaid al-Obeidi/AFP/Getty Images

この発見により、胸躍るような新しい研究の機会が生まれ、現在考古学者らは新アッシリア帝国の歴史をさらに深く掘り下げるためにモスルへと戻ってきている。

以前は、イラク国内で発見されたこのような文化遺産は、大英博物館やニューヨークのメトロポリタン美術館など、海外に持ち出されていたが、これらのスラブはイラクで保存される。

ダンティ氏はCNNに対し、「これらのスラブはイラク政府とイラク国民の公式の国有財産だ」と述べ、さらにペンシルベニア大学やモスル大学の同僚の研究者らは「これらのレリーフの発見に大変喜んでいる」と付け加えた。

またダンティ氏は、「文化遺産を鑑賞する権利は人権の一つだが、ISISのようなグループは、文化浄化やジェノサイド(集団殺害)のキャンペーンの一環として、これらのつながりを永久に断ち切りたいと考えている」と指摘した。

考古学公園

今年10月に開催された式典では、この地域で発見されたさらに素晴らしい文化遺産が公開された。

ニネベから約30キロの距離にあるファイダ考古学公園は、2019年に始まった発掘作業の完了後に発見された。

イタリア・ウディネ大学の「ニネベの地 考古学プロジェクト」は、全長約10キロの灌漑(かんがい)用水路の壁に彫られた13枚のレリーフを発見した。

灌漑用水路の壁面に沿って彫られたレリーフ/Land of Nineveh Archaeological Project, University of Udine
灌漑用水路の壁面に沿って彫られたレリーフ/Land of Nineveh Archaeological Project, University of Udine

ウディネ大学の考古学者ダニエレ・モランディ・ボナコッシ氏はCNNとのインタビューで、発見されたレリーフについて「独特」で「近東の岩壁画では類を見ない」と評した。

「ファイダのレリーフは非常に興味深い巨大な複合体を構成しており、アッシリアの王はそれを通じて、水力システムの設置を祝うための彫刻プログラムを実施した。そして、この水力システムが周辺の田園地帯に豊饒(ほうじょう)と富をもたらした」とボナコッシ氏は述べた。

1973年に英国の考古学者ジュリアン・リード氏が最初にこれらの彫刻の一部を発見したが、その全貌(ぜんぼう)が明らかになったのは今回が初めてだった。

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]