Architecture

世界最高記録を塗り替える、「55階建て木造ビル」建設に取り組む都市とは

カナダ企業のMGAが手がける「55階建て木造ビル」の完成予想図

カナダ企業のMGAが手がける「55階建て木造ビル」の完成予想図/MGA/Michael Green Architecture

(CNN) 米ウィスコンシン州ミルウォーキーにはすでに世界一高い木造ビルがある。しかしバンクーバーを拠点とするマイケル・グリーン・アーキテクツ(MGA)が設計を手がけるさらに高い木造ビルが同市の高層ビル群に加わる可能性がある。

同社が最近発表した開発計画には主にマスティンバー(圧縮された分厚い多層木材)で作られる55階建てのビルが含まれている。完成すれば、コルブ+アソシエイツ・アーキテクツが手がけた、現在世界で最も高い木造ビルである25階建てのアセントタワーに取って代わるだけでなく、ウィスコンシン州で最も高いビルになる。

木造建築を専門とするMGAはこのプロジェクトが「マスティンバーを用いた建築の新たな世界基準」となることを期待している。

なぜ木材なのか?

建築規制の変更やマスティンバーに対する考え方の変化により、世界中でマスティンバーの利用は着実に増加しているもののコンクリートや鉄鋼でできた建物の高さにはまだ及ばない。一方で近年は木材を使った高層ビルが多数提案されている。MGAによると、同社が設計するビルは高さ約182メートルになる見込みで、高さ87メートルのアセントタワーの倍以上になる。

MGAの建築家で創業者のマイケル・グリーン氏は「高さを競うのは重要だ」と語る。「見せびらかすためではなく、何ができるかを一般の人々に示すためだ」

グリーン氏は木造の高層ビルがまだ主流になっていないのは気候変動が議論の中心になっていないためだと主張する。同氏は「鉄鋼とコンクリートの現状に異を唱える必要はまったくなかった」「しかし、これらの材料は気候にとって非常に厳しいため、高層ビルや大型の建物を建設するには別の方法を見つける必要があった」と続けた。

現在、建築・建設部門は世界の排出量の37%を占めており、その多くは大量の炭素を排出するコンクリートや鉄鋼といった材料の生産と使用によるものだ。これとは逆に木は長期にわたり炭素を吸収する。木材がマスティンバーに加工され、建設に使用された場合、その炭素は建物が建っている限り「閉じ込められる」、つまり隔離される。グリーン氏は「マスティンバーを使って建物を建てることで、実際のところ私たちは炭素吸収源を使って建設しているのだ」と主張する。

プロジェクトは1969年に開業した商業施設マーカス・パフォーミング・アーツ・センターの再開発の一環/MGA/Michael Green Architecture
プロジェクトは1969年に開業した商業施設マーカス・パフォーミング・アーツ・センターの再開発の一環/MGA/Michael Green Architecture

一方で同氏は、都市を建設するために必要とされる規模で持続可能な木材を調達することは難しい可能性があることも認めている。実際、マスティンバーへの需要増は土地利用への負荷を増大させる可能性があると警告する研究もある。

主張されている炭素削減を実現するには、炭素を隔離できるよう相当の期間にわたり木を育て、伐採後に再び植える必要がある。グリーン氏によると、MGAは責任を持って管理されている北米の森林で採取される木材を使用している。

長期的には供給問題に対処するために建築家は木材以外のものを考える必要があるとグリーン氏は考えており、MGAは現在、他の植物ベースの建築資材の創出に取り組んでいると話す。一方でコンクリートや鉄鋼の使用を減らしたいのであれば、マスティンバーが「現時点では最良の選択肢」だという。

マスティンバーを利用するにあたってのその他の障壁はコストと厳格な建築規制だ。ただし近年、この状況は変化し、多くの地域でマスティンバーはコンクリートや鉄鋼に対してコスト競争力を持つようになったとグリーン氏は説明する。「以前よりも多くのメーカーを利用できるようになった。現在は大きな競争市場があり、まだ成長を続けている」

建築基準も進化している。欧州の一部の国では気候目標の一環として木造建築が義務付けられている。米国では21年、国際建築基準のマスティンバーに関する方針が更新され、6階建て以上の建築への利用が認められた。

原文タイトル:This city is developing the world’s tallest timber tower, again(抄訳)

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