数学者のNFL選手、26歳で引退 MITで博士号取得へ

数学分野での博士号取得を目指し、現役引退を決めたジョン・アーシェル選手

2017.07.28 Fri posted at 18:11 JST

(CNN) 米アメリカンフットボールリーグ( NFL)のボルティモア・レイブンズに所属し、数学者としての実績を持つことでも知られるジョン・アーシェル選手(26)は27日、現役から引退する意向を表明した。現在マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号の取得を目指しており、引退後はフルタイムで学業に専念するという。

レイブンズは声明を発表し、27日午前にアーシェル選手から引退の意向を伝えられたと述べた。アーシェル選手本人は同日午後、引退を受け入れてもらえたことへの感謝の言葉をツイッターに投稿。「簡単な決断ではなかったが、自分にとって正しかったと信じている」「数学の博士号を取るため、MITでフルタイムの勉強が始まると思うとわくわくする」とつづった。

アーシェル選手はペンシルベニア州立大学で数学を専攻し、学士と修士の学位を取得した。MITの博士課程ではスペクトルグラフ理論、数値線形代数、機械学習を研究する。

2013年にはペンシルベニア州立大学で三角法や解析幾何学の講義を受け持った。研究論文も複数発表しており、そのうちの1つは計算数学の専門誌JCMに掲載された。

プロのフットボール選手としての能力と数学の才能に加え、アーシェル選手にはチェスの達人という側面もある。2016年、ニュージャージー州で開かれた科学技術系のイベントに参加した際には、チェスの全米チャンピオンとの対戦が実現している。

今年5月に行われた科学技術系のイベントで登壇するアーシェル選手

引退のタイミングは、米研究者らがNFLの元選手から死後に提供された脳を調べた結果、頭部への度重なる衝撃が原因とされる脳の疾患が99%にみられるとの論文を発表した直後となった。

NFLでは2015年に、サンフランシスコ・フォーティナイナーズの24歳の選手が脳への外傷の長期的な影響に言及して引退。アーシェル選手は当時、スポーツメディアへの寄稿で「客観的に見れば、私は(プレーを)すべきではない。数学者としての輝かしいキャリアが待っている」と述べつつも、「試合が好きで、人とぶつかっていくのが好きだから」プレーを続けていると語っていた。

レイブンズのジョン・ハーボー・ヘッドコーチは、アーシェル選手の今回の決断を尊重するとコメント。2014年に獲得した同選手に対し「過去3年間の彼の努力に感謝し、これからの取り組みが素晴らしいものになるのを祈っている」とエールを贈った。

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