前線の怒り、国内の不安――問題に直面するロシアの動員

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部分的動員の期間中に徴集されたロシアの市民ら=モスクワ、10月10日撮影/Stringer/Anadolu Agency/Getty Images

部分的動員の期間中に徴集されたロシアの市民ら=モスクワ、10月10日撮影/Stringer/Anadolu Agency/Getty Images

(CNN) 第2次世界大戦後初となるロシアの動員は既に完了したようだが、ウクライナの戦場に大量の兵士が派遣されたことで、前線やロシア国内では反発や抗議が噴出している。

ロシア政府は最近動員された兵士のうち少なくとも5万人がウクライナ入りしたと成果を主張するが、聞こえてくるのは多岐にわたる不満の声だ。不満の内容としては、中級将校の指導力不足、大量の死傷者を出す戦術、訓練の欠如、約束された報酬の未払いが挙げられる。

兵士やその家族、ロシアの軍事ブロガーが報告するように、兵たん面の課題も存在する。軍服は十分に行き渡っておらず、食事は粗末で、医薬品も不足している状況だ。

また規律の問題もある。一部の家族からは、身内が脱走の疑いを掛けられ、ウクライナのロシア占領地域の地下に拘束されているとの抗議の声が上がる。

ロシアの独立系ジャーナリストによるプロジェクト「アストラ」のテレグラムチャンネルは拘束者の親戚の情報として、ウクライナ東部ルハンスク州ザイトセボの地下に、前線復帰を拒否したロシア人動員兵300人が拘束されていると伝えた。

ある女性は、夫から「新しい人が絶えず連行されてきて、ザイトセボにある『文化の家』の広大な地下室に収容されている。食事は1日1回で、一つの乾燥糧食を5~6人で分け合っている状況だ。彼らは収容者を常に威嚇している」と聞かされたという。

アストラは拘束者42人の名前を把握したと報道。また、親戚の話をもとに、ルハンスク州やドネツク州にある地下室や収容施設を7カ所特定したとしている。

さらに拘束されている兵士1人の妻の話として、「夫は他の80人と一緒に地下室に座っている。携帯電話を没収するため裸にされたが、幸運なことに、1人が携帯電話を隠し通した」とも報じた。

アストラによると、これらの兵士はドネツク州リマンから撤退後、戦場に戻ることを拒否して拘束されたという。

CNNは戦闘を拒否した兵士の収容施設が存在するのか、場所はどこなのかを検証できていない。

指導部の無能さやリーダーシップの欠如についての不満は広く存在する。

ロシアの軍事ブロガー(中には数十万人のフォロワーを持つ人もいる)は、上級将校への苛烈な批判を展開してきた。

50万人以上の登録者を持つブラデン・タタルスキー氏は「解任された将官の後任を務めることができる将官はいないのか。誰か候補を知らないか。私は知らない」と問いかけ、「愚か者が別の愚か者に交代する。1人が失敗し、もう1人も失敗する。3人目は比較的無害なようだが」と書き込んだ。

ロシア太平洋艦隊の第155海軍歩兵旅団は拠点地域の知事に対し、ドネツク州での「理解不能な戦闘」に投入されたと書簡で訴える大胆な抗議行動に出た。

書簡は「『偉大な指揮官』が『慎重』に計画した攻勢のせいで、死傷者や戦闘中の行方不明者が4日間で約300人に達した」とする内容で、ロシアの軍事ブロガーによって公開され拡散した。

著名軍事ブロガーの1人によると、第155海軍歩兵旅団と別の一つの部隊はドネツク州パブリウカで、2度にわたるチェチェン戦争の倍の損失を出したという。

これに対し、ロシア国防省は珍しく批判の存在を認めつつも、損失は「戦力の1%、負傷者のうちの7%を超えるものではない。負傷者の大部分は既に軍務に復帰した」と反論した。

ただ、パブリウカ付近で報告されている部隊の総崩れは単発的な事例ではない。

米シンクタンク戦争研究所のカテリーナ・ステパネンコ氏は、「(ルハンスク州の)スバトベ―クレミンナ前線に投入された準備不足の動員兵に関し、多くの不満の声を確認した。この前線は現在ロシア軍で最も戦闘が激しい陣地のひとつだ」と述べた。

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