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トラス英首相、政策転換も苦境は変わらず

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クワルテング財務相の解任後、記者会見に臨むトラス首相=14日、英ロンドン/Daniel Leal/AFP/Getty Images

クワルテング財務相の解任後、記者会見に臨むトラス首相=14日、英ロンドン/Daniel Leal/AFP/Getty Images

ロンドン(CNN) リズ・トラス首相は首相就任からわずか数週間後、最も近しい盟友だった財務相を身代わりにして、自らの身を守った。

14日午前、クワシ・クワルテング財務相は予定を1日切り上げて米国から帰国すると首相官邸に直行し、財務相の任を解かれた。

一時借り入れによる減税政策をふんだんに盛り込んだ補正予算案「ミニ・バジェット」の発表から3週間後の解任劇だった。物議を醸したミニ・バジェットで金融市場は混乱に陥り、英通貨ポンドの対ドル価格は下落して、一時は数十年来の最安値を記録した。

あれから市場もある程度落ち着いたが、ひとえに英中央銀行のイングランド銀行(BOE)の大規模な介入があったからだ。ミニ・バジェットの撤回が噂(うわさ)され、クワルテング財務相の解任もささやかれていた。

クワルテング氏が解任されても、トラス首相が危機を脱したわけではない。クワルテング氏が発表した減税および自由市場政策は、まさにトラス首相が党首選で掲げていた公約だった。

さかのぼること2012年、保守党有志が作成した著書の中で、両者は減税による英国経済の高成長という共通の意見を展開していた。英国の展望についてもクワルテング氏とトラス首相は足並みをそろえていた。つまりクワルテング氏を閣僚から外したことで、トラス首相は自らの経済計画が失敗だったことを暗に認めた形となる。

「予算案で問題だったのは数字ではない。むしろ計画の信頼性だ」。トラス首相がクワルテング氏解任を発表してほどなく、保守党の元閣僚はCNNにこう語った。

「数字や政策は撤回できる。だが信頼は取り戻せない。首相は非難の矢面に立たされていた人間を排除したが、今度は自分に矛先が向けられている」(同元閣僚)

トラス首相は14日午後、短く切り上げた首相官邸での記者会見で、自らの経済構想を弁護しつつも、ミニ・バジェットが引き起こした混乱について党や国民に謝罪することはなかった。

トラス首相は「現在の金融市場の問題により、別のやり方で使命を果たさなくてはならないというのが我々の認識だ。我々は強い覚悟で臨んでいく」と述べた。

首相の経済構想を公然と批判する声もあがっている与党議員への謝罪について尋ねられると、トラス首相はこう答えた。「党首選で掲げた公約をなんとしても果たすつもりだ。高成長の経済の実現は必要だが、国が非常に厳しい問題に直面していることも認めなければならない」

トラス首相はすぐに、クワルテング氏の後任としてジェレミー・ハント氏を任命した。これまで何度か閣僚を務め、保守党の党首選にも2度出馬したことがあるハント氏について、首相は「最も経験豊富で、広く尊敬を集める閣僚であり、国会議員だ」と称した。

次期財務相が与党やトラス氏に安定をもたらすかどうか、意見は様々だ。与党の間では、これまで保健相、外務相、文化・メディア・スポーツ相を歴任したハント氏なら、今夏の激しい党首選から回復しきっていない党を束ねられるだろうという意見もある。

ハント氏は党内の右派・左派どちらからも評判が高く、穏やかで親しみやすく、安心できる人柄は、保守党の特定の層に受けがいい。

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