橋崩落めぐる陰謀論拡散 サイバー攻撃説からワクチン原因説、イスラエルやオバマ氏関与説も

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貨物船に衝突したコンテナ船=26日、米東部メリーランド州ボルティモア/Jim Watson/AFP/Getty Images

貨物船に衝突したコンテナ船=26日、米東部メリーランド州ボルティモア/Jim Watson/AFP/Getty Images

(CNN) 米東部メリーランド州ボルティモアで貨物船が衝突して橋が崩落した事故をめぐり、直後から「真実」をかたる陰謀論がネット上で拡散している。

貨物船に対するサイバー攻撃、船長を襲った新型コロナワクチンの副反応、イスラエルやオバマ元大統領の関与――。ネット上を飛び交うデマは多岐にわたる。

全ては事実無根だった。捜査当局は早い段階で、衝突が意図的に引き起こされた形跡はないと発表していた。

それでも陰謀論の急激な拡散は止まらず、水中の捜索救助活動が続く間もSNSで何千万回も表示された。わずか数時間の間に、橋の崩落をめぐって事実とはかけ離れた代替現実が創作された。

この現象は、米国で政府やメディアに対する信頼が失墜している現実と、偽情報の共有に報いるネットのゆがんだインセンティブ構造を物語る。

これまでも全米の注目を集める惨事が起きるたびに、事実や一般認識に反する代替現実が氾濫(はんらん)してきた。

今回がこれまでと違うのは、偽情報の拡散で知られるユーザーが、即座に偽情報でネットをあふれ返らせることができたという点だ。これはフェイスブックやX(旧ツイッター)などのSNSに確実なファクトチェック機能が欠けていたことも一因だった。

26日の朝、数百万人が橋の崩落事故について最初に目にしたのは、事実ではなく偽情報だった可能性もある。

橋の崩落から6時間もたたない26日午前7時すぎ(現地時間)、Xで900万人超のフォロワーをもつアンドリュー・テイト氏は、何の証拠もなく、貨物船が「サイバー攻撃」を受けて故意に橋に衝突させられたと書き込み、「USAの外国人工作員がデジタルインフラを攻撃」と付け加えた。

女性憎悪の投稿で知られるテイト氏は、人身売買や強制性交の罪に問われてルーマニアで起訴されている。

テイト氏の投稿は27日までに、Xで1850万以上表示された。

同氏の投稿の2時間後、小学校銃撃事件をめぐる陰謀論者アレックス・ジョーンズ氏は橋崩落の映像を投稿して「私には故意に見える。恐らくサイバー攻撃だ。WW3(第3次世界大戦)はもう始まっている」とコメントした。

ジョーンズ氏など人類滅亡論をあおる陰謀論者は何年も前から世界は壊滅寸前にあると説き、備えの一環として高額なフリーズドライ食品やサバイバルキットの購入を呼びかけていた。ちなみにジョーンズ氏はそうした製品を販売している。

一方、右派のユーザーは多様性、平等性、包括性(DEI)を推進する政策に絡め、もっとふさわしい人材がいるのに多様性や包括性が優先され、それが何らかの形で事故の一因あるいは原因になったと論じた。

そうした主張を裏付ける根拠は何もない。それでもそうした投稿は、多数の「いいね」を集めて広く共有された。

事故に関するニュース報道が続く間も、陰謀論は止まらなかった。

イスラエルが関与したというデマや、オバマ氏らがサイバー攻撃を受けて座礁する石油タンカーのネットフリックス映画を制作しているという理由で、同氏が関与しているらしいというデマも飛び交った。Xで70万人がフォローする人物は26日午前、「自分で結論を」と書き込んだ。

貨物船の船長が新型コロナのワクチンを接種して倒れたとして、ワクチン原因説をXに投稿したユーザーもいた。

これに対してHBOのテレビドラマシリーズ「ザ・ワイヤー」を手がけたデビッド・サイモン氏は、貨物船が橋に衝突したのは船長が倒れたためではなく、停電のためだったと指摘した。

また、米共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(カリフォルニア州の山火事の原因はユダヤ人の宇宙レーザーだったらしいという陰謀論に関与したことで知られる)は26日、橋の崩落は「意図的な攻撃だったのか事故だったのか」とXで問い掛け、徹底捜査が必要だと主張した。

ユダヤ人の宇宙レーザーは、山火事も、ボルティモアの橋の崩落も引き起こしていない。しかし多くの米国人にとって、そして恐らく一部の議員にとっては、それほど現実離れした説とは思えないのかもしれない。

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