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アマゾン熱帯雨林、手つかずの美 19世紀の希少写真でよみがえる

アマゾンの川岸にすむワニ。19世紀の写真家が撮影した貴重な1枚だ

アマゾンの川岸にすむワニ。19世紀の写真家が撮影した貴重な1枚だ/Albert Frisch

アマゾンの川岸に潜む1匹のアリゲーター、手つかずの熱帯雨林に囲まれた空地に立つわらの小屋、ブラジルの人里離れた奥地に初めて持ち込まれたカメラのうちの1台に向かってポーズを取る部族民たち。

アマゾンは今年、かつてないほど多くの森林火災に見舞われたが、19世紀に撮影されたこれらの写真からは、未開の地だったアマゾンの過去の姿を垣間見ることができる。

写真は、ほとんど知られていないドイツ人写真家アルバート・フリッシュが1867年と68年に撮影したもの。先ごろ競売大手サザビーズ・ニューヨークが、約100枚をオークションにかけた。

フリッシュは熱帯雨林の中を徒歩と漕ぎ舟で5カ月間旅し、総移動距離は約1600キロに及んだ。サザビーズによると、写真撮影は1860年代までにブラジルの各都市ですでに人気だったが、アマゾン川上流の孤立した地域の写真は今でも珍しいという。オークションカタログはフリッシュの旅を、同地域への写真撮影旅行における最古の成功例と位置付ける。

フリッシュは後に撮った写真を販売することになるが、そもそも撮影旅行に出たのは写真を通じて同地域を調査するよう依頼を受けていたからだった。そのため写真には景色だけでなく動植物を撮影したものもあり、その中には魚、水生哺乳類のほか、35種類の植物も含まれているという。またコレクションの中には、この時代としては珍しい、ミランハ族やティクナ族といったアマゾンの部族をとらえた写真もある。

しかし、フリッシュの写真は確かに手つかずの熱帯雨林を今に伝えてはいるが、同時にアマゾンでその後に起きることを示唆してもいる。オークションに出品された98枚の写真には、植民地やゴムの木の樹液採取の証拠、さらに今年8月にブラジルの2つの州が非常事態宣言を発令するに至った環境危機の「起源」が写っている。

「一部の写真に写っているのは、初期の森林伐採だろう。もっとも、そんなことはさほど驚くことではないかもしれないが」と語るのは、サザビーズの副社長で写真部門の責任者でもあるエミリー・ビアマン氏だ。

「手付かずの風景らしきものから川を航行する蒸気船まで、ありとあらゆる物を対象とした調査なので、(これらの写真は)貿易や開拓の未来を非常によく示唆している」(ビアマン氏)

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