Architecture

ノートルダム大聖堂再建へ、樹齢数百年の仏産オークを使用

ノートルダム大聖堂再建へ、全土で木材集め

フランス・ロワール地方のベルセにある旧王室の森の奥深くで、樹齢230年の1本の木が雷鳴のような激しい音とともに地面に倒れる。

フランスでは、現在も続くノートルダム大聖堂の再建の一環として多くのオークの木が伐採されており、フランス革命期には苗木にすぎなかったこの高さ約20メートルのオークの木もその1本だ。

今から約2年前の2019年4月に発生した大火災により、ノートルダム大聖堂は壊滅的な被害を受けた。今回伐採されたオークは、他の1000本のオークとともに、屋根の木製格子の再建や、火災の炎に包まれて倒壊した尖塔(せんとう)の新しい基礎に使用される。

「(大聖堂の火災は)何かの終わりであることは分かっているが、同時に始まりでもある」と、ベルセの森の保護・管理の責任者である第15代森林管理人ポーリーン・デロード氏は言う。

デロード氏の同僚のクレア・キノンズ氏もデロード氏と同意見で、「われわれが(オークの木に)与えられる最高のセカンドライフだ」と述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は昨年の夏、火災で倒壊した高さ約100メートルの尖塔を現代的なデザインに変更する案を撤回し、火災前の姿を復元することに決めた。この尖塔は、19世紀のフランスの建築家ウジェーヌ・ヴィオレ・ル・デュクが1859年にノートルダム大聖堂に追加したものだ。

マクロン大統領の決定を受け、ノートルダム大聖堂の再建プロセスの監督として招かれた建築家のフィリップ・ヴィルヌーヴ、レミ・フロモント両氏の厳しい要求を満たす可能性のある完璧なオークを求めて、数カ月に及ぶオーク探しが始まった。

ノートルダム大聖堂再建のために切り倒された木/MARTIN BUREAU/AFP/AFP via Getty Images
ノートルダム大聖堂再建のために切り倒された木/MARTIN BUREAU/AFP/AFP via Getty Images

この冬、尖塔の支柱に使われる最初の8本のオークを見つけるために、複数のドローン(無人機)を使ってル・マン近くの雪に覆われた森の調査が行われた。そしてドローンが撮影する3Ⅾ映像を使って、目立った欠陥のない幅約1メートル、高さ18メートル以上の木のサンプルを探した。ベルセの森に生えている細い木々はわずかに曲がっており、尖塔の部材に最適だ。

選定した木は3月中に伐採され、梁(はり)を所定の場所に組んだ後に縮んだり動いたりしないように12~18カ月間乾燥させる。

再建が進むノートルダム大聖堂=2020年12月/Mario Fourmy/Abaca/Sipa
再建が進むノートルダム大聖堂=2020年12月/Mario Fourmy/Abaca/Sipa

ノートルダム大聖堂の再建の責任者を務めるジャンルイ・ジョルグラン陸軍大将によると、これらの木はルイ14世の時代にフランス海軍の船のマスト(帆柱)に使用する木材を提供するために植えられたという。

ジョルグラン大将は「われわれは60年、70年、80年、長くても100年しか生きられないが、木はわれわれが死んだ後もここで生き続ける」と述べ、「宇宙の広大さの前では人間は謙虚であることをわれわれは認識している」と付け加えた。

ベルセの森で伐採される8本のオーク以外にも、フランス国内の200以上の森林から多くの木が寄付されており、ノートルダム大聖堂の再建工事が完了すれば、フランス中の木々が大聖堂内に集約される。

木の伐採の中止を求める請願書がフランスのエコロジー相に提出されたが、林業の組織・団体は、(ノートルダム大聖堂の再建のために)伐採されているオークの数は、フランスの年間の伐採量のごくわずかにすぎないとしている。

ノートルダム大聖堂は2024年に一般公開を再開する予定だ。しかし、昨年は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の影響で工事の遅延が相次いだほか、19年には再建現場で鉛が大量に飛散し、汚染リスクが生じて工事が一時中断したこともあり、多くの人が、マクロン大統領が設定した公開再開日は非現実的と考えている。

しかし、ジョルグラン大将は強気の姿勢を崩していない。大将は「2024年に大聖堂の一般公開を再開する。それは間違いなく実行する」と述べた。

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