ニューヨーク、ビル群の重さで沈む 洪水の脅威に専門家警鐘

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米ニューヨーク市の建物の重量で地盤沈下が発生していることがわかった/Amanda Perobelli/Reuters

米ニューヨーク市の建物の重量で地盤沈下が発生していることがわかった/Amanda Perobelli/Reuters

(CNN) 米ニューヨーク市はビル群の重さで徐々に地盤沈下が進んでいるという研究結果を、米地質調査所などの研究チームが学術誌に発表した。

ニューヨーク市周辺の海面は世界の2倍を超すペースで上昇しており、2050年までにはさらに約20~76センチ上昇すると予想している。

しかも気候変動の影響で、ハリケーンなど豪雨をもたらす災害は一層頻度を増す見通しだ。

論文を執筆した米地質調査所のトム・パーソンズ氏は「海が入り込んでくるのはまだずっと先のことだ」としながらも、「ニューヨークを襲ったサンディやアイダのような大型ハリケーンでは、豪雨によって市街地が浸水し、都市化の影響で水の侵入を許した」と指摘した。

この論文は、海岸や河川、湖の沿岸部の高層ビルが将来的な洪水の原因になり得ることを示し、被害を食い止めるための対策の必要性を示す目的で発表された。

研究チームはニューヨーク市の5区にあるビル108万4954棟(当時)の重量を計算し、合計でおよそ7620億キロと算定した。これは満員のボーイング747―400型機約190万機分に相当する。

このシミュレーション結果を使って、建物の重さが地面に及ぼす影響を、実際の地表の地質状況を示す衛星データと比較しながら計算した。その結果、平均で年間約1~2ミリ沈下し、場所によっては最大4.5ミリに達する場所もあったという。

2022年9月の別の調査では、人口の多い沿岸部の48都市のうち44都市で、海面上昇を上回るペースで地盤沈下が進む区域があることが判明。今回の調査ではニューヨーク市のビル群の重さに着目し、その重さが地盤沈下にどう影響しているかを調べた。

ただし地盤沈下を引き起こしているのは建物ばかりとは限らない。パーソンズ氏は「非常に柔らかい土壌や人工的な埋め立て地で建設が行われている場所では何らかの関係がみられる」と指摘する一方、「地盤沈下の説明が難しい場所もある。原因は氷河期の後に起きた氷河の融解や、地下水のくみ上げなどさまざまだ」と解説する。

マンハッタン南部やブルックリン、クイーンズなど、平均を上回るペースで沈下が進んでいる場所もあった。「一部は建設プロジェクトの進行と関係があると思われる」「しかしスタテン島の北部にも地盤沈下がみられる。これについては説明がつかず、あらゆる要因を検討したが、依然として謎は解けていない」(パーソンズ氏)

地盤沈下は洪水の原因となる恐れがあり、「これは世界的な問題だ」とパーソンズ氏は言う。ロードアイランド大学の研究チームが世界99都市について行った調査では、大多数が地盤沈下の問題を抱えていたという。インドネシアでは首都ジャカルタで急速に地盤沈下が進んでいることから、政府が首都を移転させる計画を打ち出した。

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