ハイテク銘柄より高級ブランド銘柄? 高級品の支出増加

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ニューヨーク(CNN Business) 多くの投資家にとって、現在の株式市場を渡り歩くことは、海面に突き出た板の上を目隠しで歩くようなものだ。だが高級ブランド銘柄の投資家にとっては、ランウェーをさっそうと歩くようなものだ。

アメリカはリセッション(景気後退)入りに突き進んでいる可能性が高い。米ナスダックも年初から大幅に下がっている。だがバンク・オブ・アメリカ(BofA)がまとめた全米のクレジットカードおよびデビッドカードのデータによると、高級品の支出は今年に入ってから5月までに14%上昇している。

平日は頭を抱える証券関係者であふれるニューヨーク株式市場(NYSE)だが、先月末には同じ取引所の狭い通路をカニエ・ウェストがバレンシアガのモデルと闊歩(かっぽ)する写真があふれた。

「おそらく金はこの世で最大の崇拝の対象だ」。NYSEで開かれたファッションショーの楽屋で、バレンシアガのクリエーティブディレクターのデムナ氏はこう語った。同ブランドはNYSEのロゴ入りTシャツを800ドルで販売した。

BofAのデータによると、2021年の全米における高級品の支出は新型コロナウイルス発生前の19年と比べて47%、宝飾品の支出は40%増加した。株式市場全体の混乱も逆風とはなっていないようだ。

「多くの投資家は、全米の高級品需要は株式市場の動向と大きく連動すると考えるだろう。家計資産の大半はこうした資産クラスと結びついているからだ」とBofAのアナリストは最近のメモでこう指摘する。だが実際の連動性は違う。同社が示すデータによれば、コロナ前10年間には高級品支出とS&P500の相関関係は30%未満だった。暗号資産(仮想通貨)の価格と高級品支出の間には相関関係はまったく見られなかった。

「21年は全米の高級品消費者の需要が非常に高まったことが最大の追い風要因だった。より複雑なマクロ経済が背景にあるものの、その勢いは22年も続いている。高所得層の高級品の需要は加速している。経済活動の再開と購入機会の増加(結婚式、宴会、休暇などの再開)が原因と見られる」(BofAアナリスト)

もしこれがウォルマート対ワイツマンの対決だとすれば、軍配があがるのは後者の高級シューズブランドのほうだろう。ウォルマートとターゲットはインフレ率上昇とサプライチェーン(供給網)の混乱のあおりを受けている。

「全米のインフレ率、とりわけ食品や燃料の価格上昇により、我々は予想以上にマージンミックスや運営費用で圧力を受けた」と、ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は語った。この発言に先立って同社が発表した第1四半期の決算は予想を下回り、通期の利益予想も下方修正された。

5月末までの1カ月でウォルマートの株価は18%以上下落。ターゲット株は30%近くも減少した。対照的に、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)株の下落幅は5.6%。バーバリーは8%増、コーチやケイト・スペード、スチュアート・ワイツマンを擁するタペストリーは2%上げた。

西欧の状況は高級ブランドにとってやや朗報だが、中国の新型コロナウイルスに伴う都市封鎖(ロックダウン)では懸念材料もいくつかあった。感染増加に対する中国の厳格な封じ込め政策では、高級ブランド店は営業を停止。世界に出荷される予定だった商品は中国の港に足止めされた。だがフェラガモのマルコ・ゴベッティCEOは最近行われたビデオ会議で、米国や欧州での需要増がそうした損失を相殺したと述べた。

第2四半期は中国の消費に対するリスクの露出が少ない時期でもあった。旅行や買い物をする祝日が少ないためだ。高級ブランドはアジア各国の規制緩和もあいまって、少し息をつける状況となった。第3四半期にかけては、ロックダウンで需要が抑えられていた反動で中国消費者が「リベンジ買い」に走るだろうと期待されている。

それでも、高級ブランド銘柄はリセッションに入っているような株価だとの指摘がある。

この20年間、高級ブランド業界は6度の景気後退を経験してきた。00~01年にはITバブルの崩壊、07~09年には世界金融危機、13~14年には中国の反腐敗運動、18年には米中貿易摩擦、そして新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)、21年の中国政府による「共同富裕」政策発表だ。

こうした後退は時を重ねるごとにスパンが短くなり、度合いも軽くなっている。最初の3回を平均すると、高値から底値までの期間は85週間で下げ幅は52%、後退前の水準に戻るまで119週間かかった。だが残る3回は、高値から底値までの期間は8週間で下げ幅は22%、回復期間はわずか20週間だった。

もし同じパターンでいけば、「過去の例からは、中国のコロナ規制で高級品需要が崩壊することはなく、タイミングが変化するのみとなる。株価の後退は絶好の購買チャンスになるだろう」(BoAアナリスト)

ただ、米国民が同じように打撃を受けているわけではない状況も透けて見える。短期間のコロナ不況からの回復はK字型回復と呼ばれた。不況からの回復の度合いがコミュニティー間で異なる現象で、社会の一部分では新たに活況が見られる一方、別の部分では低迷が続く現象だ。

21年、全米ではコロナ危機から経済が回復し、市場が活況したため、全所得世帯で高級品の支出が増加した。だが22年はそうなっていない。高級品の支出増は高所得層で特に顕著で、前年比で26%増加したが、低所得層では高級品の消費は5%減少した。

少ないデータサンプルから結論を引き出すのは不可能だが、これらの数字から20年のK字型リセッションの再来がありうることがうかがえる。当時は政府による支援金給付と株価や住宅価格の上昇により、ホワイトカラー層でいち早く回復が見られた。一方、労働統計局のデータを見ると、預貯金のないサービス業従事者の間では苦難が続いた。

今はウォルマートの買い物客がふさぎ込む一方で、バレンシアガのNYSEシャツを800ドルで購入する買い物客がいる状況のように見える。

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