ANALYSIS

有権者望まぬバイデン氏対トランプ氏の再戦、それでも実現の現実味がある理由

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2024年の大統領選は再びバイデン氏(左)とトランプ氏の戦いになるのか/Getty Images

2024年の大統領選は再びバイデン氏(左)とトランプ氏の戦いになるのか/Getty Images

(CNN) ジョー・バイデン米大統領とドナルド・トランプ前大統領が、近代史でもっとも波乱に満ちた大統領選の再出馬に向けて動く中、多くの有権者は過去、そして現在からの決別を望んでいる。

CNNと世論調査会社SSRSが最近行った世論調査によると、共和党支持者および共和党寄りの無党派層のうち60%が、2024年大統領選挙でトランプ氏以外の候補者を望んでいることが分かった。かたや民主党でも、バイデン氏以外の候補者を望む人の割合はほぼ同じだった。

この調査結果から、有権者が大統領選での世代交代を心待ちにしていることがうかがえる。仮にバイデン対トランプの対決になれば、疑問の声が上がるだろう。民主主義そのものが危機に瀕(ひん)する激しく二極化した政治体制は、これまで米国が誇ってきた自己再生能力を失ってしまったのではないか? 1992年、2008年、16年に大統領を生み出した、外部の人間による魅力あふれるアピールは今のところ見当たらない。

たしかに、時期尚早ではある。いまだ記憶に新しい22年中間選挙で実感したように、国内外の危機が影を落とす不安定で党派で分断された時代には、論理や過去の事例、世論調査、数カ月前の選挙予想はたいして当てならない。

だが有権者が望むか望まざるかにかかわらず、すでに戦いは始まっている。候補者の力強さは、初期の資金集めでライバル候補や献金者の判断を左右する材料となるため重要となる。トランプ氏はすでに出馬を表明している。バイデン氏もことあるごとに再出馬の意向をほのめかし、今年の早い時期に発表することを示唆している。

民主党が上院を押さえ、共和党がかろうじて下院の過半数を獲得した中間選挙は、世論調査の結果を読み解く助けとなる。公衆衛生危機とインフレという世紀の危機に直面した後、有権者はバイデン氏が約束した平常への回帰に期待していた。だが、大統領への熱はあまり上がらず、支持率の低い大統領は中間選挙で激戦州からほとんどお呼びがかからなかった。一方で、有権者はいまだトランプ氏の息がかかる共和党に問題の解決を託したいとも考えていない。

今回の世論調査からは、始まったばかりの24年大統領選で浮かびつつあるパラドックスもうかがえる。党内でもっとも影響力があるにもかかわらず、バイデン氏もトランプ氏も2年にわたる大統領選を前に、奇妙なほどに弱い立場にあるように見える。政治情勢の変化や外部要因、あるいは年齢など、様々な問題に見舞われる可能性もある。

トランプ氏の魅力は精彩を欠きつつあるようだ。20年大統領選について愚痴をこぼし続ける同氏に辟易(へきえき)した世論を反映して、民主、共和両党が接戦となる「スイングステート(揺れ動く州)」で同氏が支持した多くの候補者は中間選挙で敗北した。これは、有権者が全国選挙で繰り返されるトランプブランドを拒絶したことを意味する。一方で説明責任を回避するトランプ氏の能力は、2件の特別検察官による調査で厳しい試練を迎えている。共和党支持者の一部ではトランプ離れも起きている。CNNの世論調査によれば、共和党有権者に指名候補者として誰を希望するか尋ねたところ、47%がトランプ氏以外の候補者を念頭に置いていると答えた。そのうち約40%が推しているのが、フロリダ州知事のロン・デサンティス氏だ。全米規模の選挙は未経験だが、すでに前大統領に対する最大の脅威として存在感を高めている。

一方のバイデン氏はというと、支持層の大半が別の候補者を望んでいるという状況は、大統領として決して褒められたものではない。バイデン氏のように支持率が50%を下回った大統領は、再出馬の選挙で劣勢に立たされるのが一般的だ。さらに、いまだかつて80代の大統領が2期目をかけて大統領選に出馬したケースはない。バイデン氏本人は、運命を非常に尊重する人間を自認している――おそらく自分の年齢では、選挙活動に必要な健康状態を当然のように保てるとは限らないと本人もよく分かっているのだろう。

だが大統領はトランプ氏よりも政治的にいい形で昨年を締めくくり、支持率低下にも歯止めをかけたようだ。民主党寄りの有権者でバイデン氏を指名候補者に推す人の割合は、この夏はわずか25%だったが、現在は40%だ。他の候補者を望む人々も、72%が特定の候補者はいないと回答し、予備選挙では現職大統領が対立候補よりも優位だという通説をさらに裏付けている。

岐路に立たされるトランプ氏

共和党の政治情勢は、転換期に差しかかっていると言えるかもしれないし、そうではないかもしれない。今後数カ月で事態がどう動くかが、トランプ氏の展望にとって重要となる。共和党内では、中間選挙で前大統領の肝いり候補者の多くが敗北したことを受け、前に進むべきだと言う声が次第に高まっている。

トランプ氏が白人至上主義者のニック・フエンテス氏やラッパーのカニエ・ウェスト氏といった反ユダヤ的な発言をした過激主義者とフロリダ州の自宅「マール・ア・ラーゴ」で夕食会を開いたことで、同氏の大統領選での勝ち目は損なわれ、もはや修復不可能だという見方もさらに強まっている。トランプ氏は自分に対する刑事訴追を迫害だと思わせるために出馬を表明したともとれるが、今のところ選挙活動は説得的なものになっていない。

とはいえ、共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(ジョージア州選出)やジム・ジョーダン下院議員(オハイオ州選出)など前大統領を支持する人々は、下院多数党となった新生共和党に大きな影響力を及ぼすだろう。矛盾するようだが、11月の選挙で共和党が伸び悩んだ結果、僅差(きんさ)での過半数獲得となったことで、過激主義者が幅を利かせやすくなった。過激主義者は下院での共和党支配を、24年大統領選でバイデン氏を攻撃しトランプ氏を後押しする武器として使うつもりだ。

トランプ氏の再出馬は、同氏の支持基盤が揺らいでいるかどうかの試金石になるだろう。ただ、たとえこうした有権者層からのカリスマ的支持が大統領選の当選には不十分だとしても、同氏を三回連続で共和党の指名候補に押し上げる力はあるだろう。憲法の停止を求めるトランプ氏の最近の発言を共和党議員の大半がたしなめようとしないのも、自分たちの選挙区内で前大統領の支持者の影響力が強いからだ。同じことは共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務にも言える。是が非でも下院議長の座を手に入れたいマッカーシー氏は、トランプ氏と過激主義者の先の交流もあえて糾弾しない道を選んだ。

16年、群雄割拠の予備選挙で、トランプ氏はおおむね30~40%の得票率で重要州での勝利を挙げていった。CNNの世論調査によれば、共和党支持者および共和党寄りの無党派層のうち、38%がトランプ氏を指名候補者に望んでいると回答している(3分の2は別の候補者を望んでいるものの、仮にトランプ氏が候補者に指名された場合、本選挙では確実に、あるいはおそらく、トランプ氏を支持するという回答だった)。

共和党から立候補する人々にとって、38%という数字は――昨年CNNが同じテーマで行った3回の世論調査の中でもっとも低い――反トランプ候補者への活路と映るだろう。だが再び群雄割拠となれば、まだ試練を受けていない候補者の間で前大統領への反対票が割れる可能性もある。

例えばデサンティス知事の場合、移民問題、トランスジェンダーの権利、反コロナウイルス感染症対策、投票詐欺疑惑など、文化戦争の重要争点をきっちり押さえて保守派有権者の心をつかんだが、トランプ氏との直接対決には至っていない。フロリダ州知事選では難なく再選を果たしたが、1期目の選挙で推薦を受けたトランプ氏と大統領選で対決するかどうかについては口を閉ざしたままだ。だが予備選挙の討論会でトランプ氏と相まみえることになれば、州知事の力量が試されることになるだろう。どこまで攻撃に持ちこたえられるか、どこまで機転を利かせられるか、いまも共和党支持層の間でカルト的人気を誇る前大統領にどこまで牙をむくことができるか。

結局のところ、敵と直接対決した時のトランプ氏はもっとも容赦なく、政治的にも長(た)けている。デサンティス氏は失うものが多い。

当面はバイデン氏が世論調査に耳を傾けることはない

別の候補者を望む民主党支持者に対し、バイデン氏の最強の切り札はすでに20年の大統領選でトランプ氏を破っているということと、1期目の大統領は最初の中間選挙で惨敗するというジンクスを打破したことだ。トランプ氏率いる「ウルトラMAGA(米国を再び偉大に)」勢力が米国の民主主義にさらなる攻撃を仕掛けていると警告したことなどが功を奏した形だ。

バイデン氏にとって、党内からの不支持は今に始まったことではない。最初の2回の大統領選出馬では早々に退陣した。20年の大統領選でも、サウスカロライナ州の予備選挙で勝利して望みをつなぐまでは混乱状態だった。昨年の中間選挙前も、支持率低下と猛威を振るうインフレでバイデン氏は大敗を喫するだろうというのが一般的な予想だった。だが共和党の「赤い波」は起きず、民主党は拮抗(きっこう)していた上院で議席を1つ伸ばした――ホワイトハウスの安堵(あんど)の影で、共和党が牛耳る下院から調査権限を盾に責任を問われる可能性はある。

これまで政治生命に関する予想を幾度も覆してきた大統領が、他の候補者を望む有権者の声を示した世論調査に関心を払うとは考えにくい。最近では、民主党の予備選挙スケジュールを変更して、対立候補者への予防線を強化した。これまで芳しい結果を出せずにいたアイオワ州の党員集会ではなく、お気に入りのサウスカロライナ州を最初の予備選挙に持ってきた。カマラ・ハリス副大統領も、バイデン氏に禅譲を求める党内情勢が作れるほどの力強い実績を示していない。大統領の座を狙う民主党の面々も、同じ党の現職大統領の足を引っ張ることには及び腰だ。

中間選挙後、再出馬の根拠を求める大統領にとって、理由には事欠かない。CNNの世論調査によれば、バイデン氏の支持率は上昇傾向にあり、共和党におけるトランプ氏よりも優勢だ。先月発表された経済指標も生活費の上昇が鈍化する可能性を示しており、これもまたバイデン氏の立場を強化するだろう。

とはいえどんな大統領も、支持率や再出馬の可能性を打ち砕くような不測の外的要因には弱い。さらに、米国史上最年長の大統領は日々年齢の問題に直面しなくてはならないだろう。選挙活動のペースが少しでも緩めば、あるいは風邪を引いただけでも、共和党は2期目継続にふさわしくない証拠だと指摘してくるだろう。バイデン氏は健康そうに見えるが、80代になれば不利な出来事が起きる確率も高くなる。

だがバイデン対トランプの対決になった場合、年齢の問題はさほど重要ではないかもしれない。トランプ氏ももう76歳だ。一方、40代のデサンティス氏のような若い共和党候補者が立った場合、現職大統領は弱い立場に置かれるかもしれない。

リーダーの世代交代という考え方は、24年大統領選の有力な可能性として浮かび上がるのかもしれない。

本稿はCNNのスティーブン・コリンソン記者の分析記事です。

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