OPINION

ペレにまつわる偉大な論争

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パリ・サンジェルマンとフランス代表で活躍するキリアン・エムバペ(右)と/Franck Fife/AFP/Getty Images

パリ・サンジェルマンとフランス代表で活躍するキリアン・エムバペ(右)と/Franck Fife/AFP/Getty Images

サントスと代表でのキャリアに終止符を打った後も完全には引退せず、その才能を米ニューヨークに持ち込む。ニューヨーク・コスモスでプレーした75~77年、自身の知名度によって新たなファンを獲得し、北米サッカーリーグ(NASL)の試合には大勢の観客が詰めかけた。

リーグは最終的に打ち切られたが、ペレが米国文化に与えた衝撃はコスモス在籍時前後に強化された。この間ペレはペプシのコマーシャルに出演し、ホワイトハウスも訪問。テレビ司会者のジョニー・カーソンにサッカーを教えたほか、81年の映画「勝利への脱出」では、シルベスター・スタローンと共演している。

これらを含めたあまりに多くの理由から、ペレを史上最高の選手(GOAT)と命名するのに異論が唱えられることはない。そうした状況は、現在の米国男子代表の選手たちが生きてきた年月よりずっと長く続いている(それこそ何年も上回る)。

とはいえこの数週間、歴史上最も素晴らしいサッカーの試合の一つ(のみならず、あらゆるスポーツ大会の決勝戦で最高の部類)と考えて間違いない試合の決着を受け、一部の批評家やファンはそろってリオネル・メッシにサッカー界の最終的なGOATの称号を与えた。これによりクリスティアーノ・ロナルドやディエゴ・マラドーナといった選手たち、そしてもちろんペレも、いくらか後方へと退いた形になる。

ペレの死去は、そうした権威の移行に歯止めをかけた。少なくとも現時点で、我々にはサッカー界の国際的なスーパースターの元祖に思いをはせる時間が与えられている。そしてその名が競技と同義になるような、稀有(けう)な象徴的アスリートを思い出すだけでなく、最も偉大な存在となることが何を意味するのかについて考える機会にもなっている。

ある時のスポーツ界では、いわゆる「goat」になりたい選手など一人もいなかった。その語が意味するのはキャッチミスをしたりタッチアップを忘れたり、最悪の場面で落球する選手のことだった。今、全て堂々たる大文字で記される栄光のGOATは、現時点で存在する最高の選手というだけでなく、格段に重要な意味で過去のどの選手をも上回る選手を指す。GOATを巡る激しい論争には、様々な競技と様々な時代で活躍した面々が登場する。ウェイン・グレツキー、ベーブ・ルース、レブロン・ジェームズ、マリアノ・リベラ、アビー・ワンバック、マイケル・ジョーダン、セリーナ・ウィリアムズ、タイガー・ウッズ、ロジャー・フェデラー、アリソン・フェリックス、マイケル・フェルプス、ベーブ・ディドリクソン、ジャック・ニクラウス、ビリー・ジーン・キング、アル・オーター、マーガレット・コート、モハメド・アリ、シモーネ・バイルズなどなど、枚挙にいとまがない。

一時期、自身に文字通り「グレーテスト」というニックネームを付けたアリは、「G.O.A.T Inc.」への権利を有していた。これは妻のロニーが92年に設立した法人で、アリはその権利を2006年に、5000万ドル余りでエンターテインメント会社のCKXに売却。同社はアリの名前と肖像権で得る利益の80%を購入した。

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