OPINION

インドへの支援なくしてコロナ禍は終わらない、世界は直ちに行動を

ニューデリーの火葬場で、コロナ関連で死去した親類の埋葬を終えて座り込む男性/Anindito Mukherjee/Getty Images

ニューデリーの火葬場で、コロナ関連で死去した親類の埋葬を終えて座り込む男性/Anindito Mukherjee/Getty Images

(CNN) 1年前の今頃、インド系米国人の医師である我々は、自分たちの住む米国が新型コロナウイルス感染の第1波に屈したのをなすすべなく見つめていた。この1週間は、父祖の国であるインドが感染者の壊滅的な急増に屈服するのを目の当たりにしている。現行のウイルスの猛威には終わりが見えない。病院のベッドが埋まっていく中、我々の対話アプリは嘆願のメッセージで埋め尽くされる。現地からそれらを送信する家族や友人は、医療崩壊のただ中で苦しみ、命を落としている。ソーシャルメディアにはインド国民の恐ろしい画像があふれかえる。苦しそうにあえぐ状態にもかかわらず、酸素もベッドもないという理由で病院から拒まれる人々。大規模な火葬と埋葬の様子。路上で死を迎える人々。

世界第2位の人口を抱えるインドが、新規感染者数の最多記録を更新している。今や日々報じられる新規感染者の数は40万人を超えるが、それすらも専門家の大半は著しく過少に見積もられた数字だとしている。最悪の時はこれから訪れる。だからこそ米国は、主導的な役割を担ってこの世界最大の民主主義国を支援する必要がある。新型コロナウイルスの感染が地球規模で拡大する以上、インドの危機的状況を直ちに抑制できなければ、米国を含む世界中が被る影響は計り知れないものとなるだろう。

なぜインドのコロナ危機が世界に影響を及ぼすのか?

第1に、インドでの感染拡大に歯止めがかからない限り、より危険な変異株が発生する可能性がある。そうなれば各国が進めてきた感染抑止の取り組みに支障をきたす。すでに世界中に広まった変異株「B.1.1.7」に加え、「B.1.617」と「B.1.618」も現在インド全土で急速に拡散している。これらのより新しい変異株は感染力が従来以上に高い恐れのほか、ワクチンや以前の感染でできた免疫をすり抜ける可能性があるともみられている。「B.1.617」はすでに、インド以外の20カ国超に広がっており、そこには米国も含まれる。新たな変異株の存在は経済の回復にとって脅威であり、集団免疫を獲得する妨げとなる。

第2に、インドはワクチンと治療薬の主要な供給元である。同国は新型コロナウイルスワクチンを分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、中低所得国向けのワクチンを供給することで合意した。同時に同国が製造する抗ウイルス薬「レムデシビル」は感染者の重症化を抑え込む目的で恒常的に使用されている。インドの危機は感染拡大と闘う世界の力を弱体化させる。数多くの国々がワクチンと治療薬という極めて重要なライフラインを失うことになるからだ。

第3に、米国はインドの医療や経済の繁栄から直接的な恩恵を受ける立場にある。インドは地域における重要な経済・安全保障上の同盟国だ。同国出身の医師は米国内で致命的となりかねない人材不足を補う役割を担い、感染拡大期を通じて命を救う医療の提供に一役買ってきた。世界最大の医師の輸出国であるインドは、数万人の医師や看護師を米国に供給している。つまりインドへの投資は、我が国の医療インフラへの投資と同義なのである。

米国がインドを助ける方法は?

バイデン大統領の医療アドバイザーを務めるアンソニー・ファウチ博士が最近インドについて表明したように、「本当にもっと多くのことをする必要がある」。バイデン政権がこのほど発表した援助のほかにも、米国は長期的な医療外交と対策の立案を主導するべきだ。

第1段階として、米国で余ったワクチンはすべて、インドなどそれを必要としている国々に振り向けるとよい。英アストラゼネカ製ワクチンの未使用分を供給するのは称賛に値するが、これは始まりに過ぎない。同社のワクチンは米国で使用が認められておらず、数百万回分が「保留状態」だ。米国にとっての利益はワクチンをため込むことではなく、それらを確実に行きわたらせることにある。最もワクチンを必要とする国々に公平に供給できるようにしなくてはならない。世界的なワクチンの供給状況は公平なものとはほど遠く、現在低所得国に割り当てられているのは全体のわずか0.3%という有様だ。

米国はまた、インドをはじめとする他国を支援し、ワクチンや治療薬、感染拡大と闘うための各種供給品の製造にも協力するべきである。世界最大のワクチンメーカー、インド血清研究所(SII)はツイッターで米国に対し、ワクチン生産に必要な原料の輸出制限を解除するよう訴えた。米国は最近、原料と援助物資をインドに送ると約束したが、こうした措置を皮切りに現地で即刻求められる感染対策に取り組むことが不可欠だ。しかしこれだけでは到底足りない。個人防護具(PPE)や重要な酸素の供給、金銭的な支援以上のことがこの前例のない危機においては必要になる。世界的な感染拡大に終止符を打つ一助とするため、米国は特許の放棄を後押ししなくてはならない。そうすればインドなどの中低所得国は、他の国々との協力関係を強化することで自前のワクチンを製造できるようになる。プールされた資源を活用してより多くの資金を投じ、技術を伝達し、既存の供給業者からの支援を受けることも可能だ。さらに援助を通じてこれらの国々にツールを供給し、迅速な検査並びに変異株のゲノム解析を実施させる必要もある。

最後に、米国の政治指導者らはインドのモディ首相に対し、感染拡大を抑え込むためのより厳格な措置を策定するよう求めなくてはならない。感染者数と死者数の報告について、より高い透明性を求めることも必須だ。我々も前政権から被った壊滅的な影響には大いに思い当たるところがある。同政権は重大な情報を抑えつけ、感染拡大の深刻さをこれ以上ないほど過小評価した。科学的見地からの助言も無視していた。感染状況を緩和する一段の措置がなければ、新型コロナによるインドの累計の死者数はすぐにも米国を上回るだろう。米国はインドからの入国制限を開始したが、渡航を禁止するからといって世界的な感染拡大が終わるわけではないことは肝に銘じる必要がある。

現在世界の新規感染者数が最多を更新するときには、その3分の1をインドが占める状況となっている。米国は地球規模での医療外交を主導し、この感染拡大に歯止めを掛けなくてはならない。

バブナ・ラル博士は内科の医師で、ヒューストン大学医学部の臨床学准教授。プージャ・ガラ博士はニューヨーク大学医学部の臨床学准教授。レシュマ・グプタ博士はカリフォルニア大学サクラメント校の内科学教授。ジェイ・バット博士は内科の医師で、イリノイ大学シカゴ公衆衛生学部で教鞭をとる。シカ・ジェイン博士はイリノイ大学シカゴの内科学准教授。アリ・カーン博士はシカゴを拠点にする総合内科医。リピ・ロイ博士は内科の医師で、ニューヨーク市における新型コロナ隔離対策のメディカルディレクターを務める。ビニート・アロラ博士はシカゴ大学病院の内科学教授。記事の内容は博士ら個人の見解です。

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