荒れる南シナ海、米海軍は問題続きの「沿海域戦闘艦」に白羽の矢<下>

フィリピン海での通常任務を行うインディペンデンス級沿海域戦闘艦「タルサ」/Petty Officer 2nd Class Colby A. Mothershead/US Navy

2021.09.11 Sat posted at 11:30 JST

香港(CNN) 専門家の疑念とは対照的に、米海軍は沿海域戦闘艦(LCS)を信頼する姿勢を示しており、就役中または製造段階の艦は34隻に上る。LCSは単胴船と三胴船の2つのタイプがあり、後者は太平洋を拠点にしている。

この地域でのLCSの活動を管轄する第7駆逐艦隊の指揮官、トム・オグデン海軍大佐は今夏の記者会見で、LCSが2019年、20両年にスプラトリー諸島で「航行の自由作戦」を3回実施したことを明らかにした。米海軍は航行の自由作戦を「外国による行き過ぎた海洋権益の主張への異議申し立て」と位置付けている。

オグデン氏はまた、LCS「ガブリエル・ギフォーズ」による20年の南シナ海展開を称賛。「彼らは正しい時に正しい場所にいることもあった」との見方を示した。

一方、シンガポールを拠点にするアナリストのブレイク・ハージンガー氏は、ガブリエル・ギフォーズが必要な時に必要な場所にいる能力は機械的な問題のせいで制限されていると指摘する。

同盟国やパートナー国との交流が中止となり、「東南アジアでのLCSの評判は大きく損なわれた」とハージンガー氏は説明。「彼らはメンテナンス上の問題を抱えていた。故障のため現場海域にたどり着けず、演習を中止した」と話す。

ただ、もしガブリエル・ギフォーズを信頼できるのであれば、米国の存在感を示したり、駆逐艦や巡洋艦のような高性能艦をより重要な任務に回したりするうえで有効な可能性はあるという。

太平洋での任務に向けサンディエゴの海軍基地を出発する沿海戦闘艦「モンゴメリー」

「ガブリエル・ギフォーズは係争水域において象徴的な支援と局所的な軍事プレゼンスを提供できる。これにより、より高価な艦船の負担を減らしてよりダイナミックに活用したり、戦闘への高い即応性を維持したりできるようになる」。こう指摘するのは、英ロンドンの王立防衛安全保障研究所で海軍力を研究するシドハース・カウシャル氏だ。

カウシャル氏はガブリエル・ギフォーズを、今後5年で新型フリゲートの運用が始まるまでの穴を埋める「つなぎ」と形容する。海軍は20年に最初の新型フリゲートを発注した。

このコンステレーション級フリゲートは20隻が計画されており、米政府の文書によると、沿海域と外洋の両方で対空防衛や水上防衛、対潜戦、電磁戦を実施できる装備を持つ。

ただ、高額なコンステレーション級で発注済みなのは2隻のみで、実戦配備は数年先になる見通し。LCSとフリゲートのこうした状況は、太平洋における海軍のリソースがどれほど逼迫(ひっぱく)しているかを示すと、ハージンガー氏は指摘する。

同氏によると、海軍の次年度予算案に盛り込まれている水上戦闘艦は4隻、フリゲート艦は1隻のみ。

「これでは現行水準を維持することさえできない。これは縮小する海軍の姿だ」という。しかも少なくとも短期間的には、海軍はLCSに頼るほかない状況が続く。

「LCSをサンディエゴの埠頭(ふとう)に係留しておくよりはマシだろう」「我々が必要とした艦船ではないが、我々が手にしているのはこの艦だ」(ハージンガー氏)

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