秘密の国の中心へ――CNNが旅した北朝鮮<2> 海産物とミサイルの町

2017.10.21 Sat posted at 09:00 JST

(CNN) 北朝鮮の首都、平壌から東へ約200キロに位置する元山(ウォンサン)への旅路を表現するのは、ただ一言、「デコボコ」だ。

元山への移動にはおよそ5時間かかる。何度も停車を強いられながら。一度は20分、待たされたこともあった。大規模な道路工事のためだ。

小型車だけは通過できたが、CNN取材班は大きなバンで移動していた。取材班が通過を許されるまでには、取材班に同行していたお目付け役と現場を担当していた当局者との間でのいくらかの事前交渉と、何本かの電話、そして、建設現場の作業員の横を静かにかつ注意深く通行するとの約束が必要だった。

空気の通りも悪く暗いトンネルの中をノロノロと進む中、取材班は作業している男女を目にした。

景色は素晴らしいものだった。荘厳な山々、深い森林、遠くに点在する村々。こんな小さく人里離れた社会で暮らすというのはどのようなものなのだろうと考える。部外者、特にジャーナリストなどが訪れることのない場所の生活とは。

元山は、北朝鮮では5番目に位置する中規模の工業都市だ。旅行客にも人気で、釣りや海産物で知られる。

元山はまた、北朝鮮がミサイルを発射する場所のひとつでもある。

北朝鮮によるミサイル開発プログラムは、米国やその同盟国による抑止の取り組みを寄せ付けず、急速に進展している。北朝鮮はいまや、核弾頭も搭載可能な可能性のある大陸間弾頭ミサイル(ICBM)も保有しており、初めて米国本土を射程距離内におさめている。

北朝鮮を建国した金日成(キムイルソン)主席は1980年代に、最初のスカッドミサイルの発射を監督した。その息子で後継者の金正日(キムジョンイル)総書記は17年におよぶ統治期間に10回を超えるミサイル発射を行った。

釣りをする元山の人々

しかし、金正恩(キムジョンウン)委員長は2011年に権力の座について以来、これを新しい段階にまで引き上げた。人工衛星を打ち上げ、核実験を指示し、恐ろしいほど定期的にミサイルを発射している。

このため、北朝鮮は、米国との戦闘に恐ろしいほど近づいている。米国では、トランプ政権の下で、北朝鮮による実験への反応は、だんだんと好戦的なものへとなりつつある。

しかし、核実験の試験は続いている。なぜだろう。プロパガンダだ。ミサイルの発射はいずれも、北朝鮮の指導層にとって、自国民に対するものと同時に海外に対しても行われている。これは、金正恩委員長と朝鮮労働党にとって、北朝鮮やその同盟国から北朝鮮を守るための保険のようなものだ。金政権を維持するための。

しかし、元山では、そんなことはすっかり忘れてしまいそうになる。元山では、地元の人々は魚釣りをしながら静かな午後を過ごすことができる。退職した男性にここでの生活はどんなものか尋ねると、海からの澄んだ空気のおかげで、とても素晴らしいものだという答えが返ってきた。

ミサイルの発射のおかげで、世界が元山のことを知っていると伝え、ミサイル発射について知っているか尋ねてみた。

「ええ、ミサイルをみました。それはうれしいものでした。ドカン!と打ち上がっていくのを見ました」

元山は、旅行客にも人気で、釣りや海産物で知られる

空に打ち上がったミサイルから何を感じたか尋ねた。

「誇り」と答えが返ってきた。

この男性は、多くの北朝鮮の人々と同じように、ミサイル開発プログラムに、なぜ米国がそれほど脅威を感じているのか理解できないでいた。

「北朝鮮が進めている作業は、自国の防衛のためだ。なぜ、米国は制裁決議を押し付けようとするのだろうか」当惑した表情で彼は質問した。

ミサイルは別にして、元山が誇る業績のひとつは新しい水力発電所だ。その大部分は地元の住民自身によって建設された。この水力発電所のおかげで、元山は北朝鮮では定期的な停電の発生しない数少ない場所のひとつとなっている。

平壌へ戻る途中、取材班が喫茶店に立ち寄ってとき、そのことを思い知らされた。食事を初めて数分後、明かりが消えた。動じるものは誰もおらず、取材班は懐中電灯を使ってキジ肉の夕食を楽しんだ。

次回「秘密の国の中心へ――CNNが旅した北朝鮮<3> DMZ、ロッドマン、ワームビア」は10月22日公開

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。