拉致被害の女性、回復支援の取り組みに密着 ナイジェリア<下>

女性たちは歌やダンスを通じて互いに打ち解けていく

2017.06.17 Sat posted at 09:00 JST

ナイジェリア・アブジャ(CNN) ナイジェリア北東部のチボックで3年前に発生した、寄宿学校の女子生徒たちの大量拉致。イスラム過激派「ボコ・ハラム」により276人が拉致されたこの事件は世界に衝撃を与えた。

拉致被害者のうち57人は直後に脱出。1人は2016年に森で見つかって保護された。その後、同国政府とボコ・ハラムとの交渉で、17年5月までに103人が解放されている。

CNNは16年10月に解放された女性21人たちの回復を支援する施設を訪問し、心身のケアや社会復帰に向けた取り組みの概要と課題について取材した。

「今は健康そのもの」

女性たちの世話をしている人々の中には、精神科医、心理学者、ソーシャルワーカーらで構成される「心理ソーシャル」チームも含まれている。また同施設には医者が1人と、住み込みの女性の世話係2人がいる。世話係の1人はチボック出身だ。

女性たちの治療に当たっている心理学者によると、彼女たちは「驚くほどの回復」を見せているという。

「彼女たちが最初に解放された時のことを今でも鮮明に覚えている。当時、彼女たちには心的外傷後ストレス障害(PTSD)、悪夢、不眠症の症状が見られたが、今は健康そのものだ」とその心理学者は言う。

リハビリ施設内の女性たちと連絡が取れないことに抗議する親たちの団体

親たちの不満

施設の女性たちは順調な回復を見せているようにも見えるが、ナイジェリア政府は、女性らの家族が彼女たちに定期的に会うことを許していないとの批判を受けている。

ある家族は、マスコミのインタビューや抗議団体「Bring Back Our Girls(われわれの娘たちを返せ)」を通じて、身内の女性らと連絡が取れないと訴えている。

しかし、アルハッサン女性問題担当相は、女性たちの親は彼女らに自由に会えると反論する。

「親たちはこれまでも彼女たちに会いに来ている。彼らは、女性たちがこの施設で暮らすことに同意している」とアルハッサン氏は主張する。

「われわれは誰にも強制はしておらず、彼女たち一人ひとりにどうしたいか希望を聞いた。また毎月彼女たちを集めて、家に戻りたいか否かを尋ねている」

拉致被害に遭った女性が親族や地域社会から拒絶されたり虐待を受ける場合もあるという

またアルハッサン氏は、安全上の懸念から女性たちがグループで出歩くことは禁じているが、チボック出身のある若い女性は今、2週間の休みの間に両親に会いに帰省中だと付け加えた。

「彼女たちはここに軟禁されているわけではない。彼女たちにイースターに帰省したいかどうか尋ねたが(中略)彼女たちはまだ怖がっており、家には帰りたくないと答えた」(アルハッサン氏)

「帰宅は賢明ではない」

ボコ・ハラムに拉致された女性被害者らは、しばしば自分たちのコミュニティから拉致被害者の烙印(らくいん)を押されたり、虐待を受けていることがヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体の調査で明らかになっている。親族が、ボコ・ハラムのメンバーの子を身ごもって帰宅した未婚の若い女性を拒絶するケースもよくある。

心理学者のソミアリ・デム氏は、「家族が離れ離れに暮らすのは真の治療を行う上で逆効果だが、ナイジェリアの現在の情勢や状況を考えると、帰宅することが賢明とは思えない」とした上で、「政府は、被害女性たちが安全を確保しつつ、家族と定期的に過ごせる適切なシステムやインフラを構築する必要がある」と指摘する。

連載終わり

拉致被害女性、悪夢の記憶を乗り越えて

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