変わりゆく香港麻雀事情、見つめ続ける牌彫師に聞く<上>

香港の彫師が製作した麻雀牌。その技術は香港政府から「無形文化遺産」に指定された

2017.12.30 Sat posted at 10:00 JST

香港(CNN) 「落日は無限に魅力的だが、日の光は消え始めている」。こう話すのは香港最後の麻雀牌彫師の1人、何秀湄さん(59)だ。自身の業界が衰退していくのを目の当たりにして、悲喜こもごもの思いを表現するため中国のことわざを引用した。

1960年代には20人以上の麻雀牌彫師がおり、専門の業界団体まであった。何さんの推計によると、現在残っている彫師の店は自身のものを含め4~5カ所。他は売り上げ低迷のため閉鎖されたという。

牌彫りの技術は2014年、雨傘作りや民謡、カンフーなどとともに香港政府により「無形文化遺産」に指定された。

伝統の職人芸は衰退しつつあるのかもしれないが、麻雀そのものは活況を呈しているようで、現代風の新しい雀荘が香港中に出現している。

何さんの店は九龍半島のホンハムにある。壁には新聞の切り抜きや家族の写真などが所狭しと貼られている。

13歳のときから麻雀牌を手彫りしてきた。「店には子ども時代の思い出が詰まっている。私はここで育った」と話す。

香港でも数少ない麻雀牌彫師の1人、何秀湄さん

父親の引退を受けて自身が店を継いだ。他のきょうだいは誰も技術の継承に興味を示さなかったためだ。

「この業界は死に絶えつつある」と語る何さん。手彫りの麻雀牌は長持ちすることが原因で、大量生産の牌が普及する以前でさえ購入者の数は多くなかった。高級なものになると少なくとも20年、中には50年も持つ牌があるという。

業界は衰退しているが、何さんの忙しさは変わらない。購入まで少なくとも1カ月待ちの牌もある。13歳のころから磨いてきた何さんの彫師としての技術は折り紙付きで、顧客からの信頼も厚い。

麻雀牌はかつて木や象牙、竹で作られていた。しかし現在は平らで保管しやすい硬質プラスチックで製造されている。

牌彫りについて「すべての手順が記憶に刻み込まれている」と話す何さん

何さんは「すべての手順が記憶に刻み込まれているので、作業は難しくはない。ただ、背中や目の問題で以前よりも仕事が遅くなった」と話す。

狭い仕事場で1日に4~5時間を過ごす。加熱ランプを使用しプラスチックを柔らかくすることで、模様を刻み込めるようにする。

模様を刻んだ後は筆を使って赤や緑、青に彩色。絵柄だけが残るように余分な塗料を拭き取る。そこで再び加熱ランプを使い、塗料を乾燥させるという流れだ。

この過程を次から次へと繰り返し、4~5日ほどで1セットを完成させる。値段は約230ドル(約2万5000円)だ。

次回「変わりゆく香港麻雀事情、見つめ続ける牌彫師に聞く<下>」は12月31日公開

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