完全まひ患者と意思の疎通を、医療科学の挑戦<3> 技術普及への課題は

最新研究の成果を日々の介護現場で活用するにはまだ様々な課題がある

2017.08.16 Wed posted at 18:00 JST

(CNN) 脳は機能しているが、体は完全まひ状態となるロックト・イン(閉じ込め)症候群。まばたきすらできなくなった患者といかにしてコミュニケーションを取るのか。現在科学者の国際チームにより、非侵襲性(患者の生体を傷つけない)脳コンピューター・インターフェース(BCI)システムに基づいた最新の研究が行われている。

これらの研究成果が実社会でどの程度普及していくのか。ニューヨーク州立大学オールバニ校公衆衛生学部准教授で適応神経科学研究センターの研究専門科学者でもあるゲルウィン・シャルク氏は、実際の介護現場で利用可能なものになるよう技術を簡略化し、コストを引き下げられるかが鍵になると語る。

「(脳コンピューター技術を)普及させる上で最大の障害は、高額なシステムの開発・維持費だろう。それに加えて、この技術は本当にごく少数の人の助けにしかならないという問題もある。これはいわばオーファンドラッグ(=希少疾病用医薬品)のようなものだ(中略)非常に有用だが、対象が極めて少数の人に限られる」とシャルク氏は言う。シャルク氏自身は当該の最新研究には関わっていない。

「またこの技術により、重要な倫理的問題も出てくる」とシャルク氏は指摘する。例えば、医師らが患者の生命維持の打ち切りを勧める一方、患者自身がBCIを通じて生き続けたいという意思を示した場合、一体どうなるのか。

最新技術により、完全まひの患者が治療や介護の決定権を持つようになるとの見方も

患者自身が決定権者に

このBCIにより、患者は自分の医療や介護に関する決定権を取り戻せる可能性がある、と語るのは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校神経学准教授で、サンフランシスコVAメディカル・センターの勤務神経科医でもあるカルネシュ・ガングリー医師だ。

「今回の最新の研究結果を受け、この非侵襲コミュニケーション技術の可能性が、ロックト・イン症候群患者の介護に重要な影響をもたらすのは間違いない」とガングリー氏は指摘する。ガングリー氏自身は今回の最新の研究には関わっていない。

ガングリー氏は「例えば、医療介護においてはしばしば、患者の同意を得る必要に迫られる」と説明。BCIの技術があれば「患者は自らの自分の治療や介護に関して選択する力を与えられる」と続けた。

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