大気汚染が広げる北京の環境格差<3> 経済損失は60兆円

2017.03.15 Wed posted at 17:00 JST

北京(CNN) 中国・北京に住む富裕層は大気汚染から逃れるために空気清浄機を導入するなどの対策を取っているが、普通の北京市民には、こうした費用は出せそうもない。北京大学の報告書によると、平均年収は1万7000ドルを下回る。中国のエリートや超富裕層は自衛のための措置を講じることができる一方で、自分たちはそうした対策を取れないとの不満の声も高まっている。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のバーバラ・フィナモア氏は昨年5月、大気汚染をめぐる懸念は中国の社会的な安定を脅かす規模に達したと指摘した。

中国は世界最大の温暖化ガス排出国だ。経済が被る損失は大きく、ランド研究所によれば、2012年の環境汚染による経済的損失は約5350億ドル(現在のレートで約60兆円)に達したという。

中国政府は大気の質が切迫した問題であることを把握しており、2014年には「汚染との戦い」を公に打ち出している。

裕福になった中国の中上流階級は海外を旅行し、世界事情への知見を増やせるようになった。汚染の危険性について知り、それを避ける術を学ぶことも可能になった。

オバマ米大統領(当時)とともに「パリ協定」批准を明らかにした中国の習近平国家主席=2016年9月

中国は近年、環境対策で一定の成果を上げている。中国国営の新華社通信によると、北京市内の663地区で石炭に代えクリーンエネルギーを導入。国際的にも、気候変動対策の枠組み「パリ協定」に調印した。

ただ、こうした措置にもかかわらず、北京が年を追うごとに居住不可能になりつつあるとの見方はほとんど払拭(ふっしょく)できていない。15年には、大気汚染の負の影響についてのドキュメンタリー「穹頂之下」が話題に。ネット上で多くの視聴者を集めたものの政府の検閲が入り、動画共有サイトから削除された。

次回「大気汚染が広げる北京の環境格差<4> 環境問題を商機に」は3月16日公開

大気汚染厳しい北京、その暮らしとは

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