米ユタ州オグデン(CNN) 米ユタ州ウィーバー郡の保安官事務所。机の間を歩いてきた警察犬は同僚からセレブのような歓迎を受けた。「おいポルノ犬が来たぞ!」――違法ポルノの記憶媒体を匂いで探知することができる「ポルノ犬」は、同保安官事務所の最新兵器だ。
コンビを組むキャメロン・ハートマン捜査官によると、この犬は黒のラブラドールレトリバーで、収容施設から2度にわたり保護された。同氏は5月末に犬を引き取り、「URL」(発音は「アール」)と命名。職務内容にふさわしい名前を与えた。
URLの仕事は、電子的な記憶媒体の匂いを嗅ぎ当てることだ。こうした警察犬は全米でも20数頭以下しかおらず、USBメモリーやメモリーカード、携帯電話、タブレットといった機器に特有の化学物質を探知できる。
これらの警察犬は、機器内に電子的な証拠が存在するかを捜査官に知らせることはできないものの、人間であれば見逃してしまうような機器を発見することができる。
ハートマン氏が有名な例として挙げたのは、米サンドイッチチェーン大手サブウェイの元広報担当者、ジャレド・フォーグル受刑者の件だ。フォーグル受刑者は昨年、児童ポルノ関連の罪などで有罪判決を受けた。
捜査員らはURLと同じ人物の訓練を受けた警察犬「ベア」に導かれる形で、フォーグル受刑者の自宅に隠されていたUSBメモリーを発見。地元の司法当局は、これらの機器の中にフォーグル受刑者に不利な証拠が含まれていたことを確認した。
ベアはまた、体操米国代表のコーチを務めたマービン・シャープ被告の立件でも力を発揮した。シャープ被告は児童にわいせつ行為を働いた罪に問われていたが、拘置所で自殺している。
訓練を担当したトッド・ジョーダン氏によると、シャープ被告の自宅などを捜索する過程で、銃金庫の中に複数のSDカードが隠されているのがベアの誘導により発見された。密閉された金庫の中の匂いを嗅ぎ当てるほどにベアの嗅覚が優れていることを示す例だという。
URLと組むハートマン氏は現在、ユタ州の特別チームの一員としてインターネット経由の児童犯罪対策に取り組んでおり、相棒の働きに期待を寄せている。同氏によると、児童性犯罪などの捜査数件で、特別チームによる捜索中にURLがポルノ関連の証拠を発見したという。
ハートマン氏は「電子記録媒体の中に証拠が隠されている可能性があるとの判断を捜査員が下せば、そこからがURLの出番だ」と説明する。ふたをした瓶の中にUSBメモリーを入れ、これをさらに箱の中に隠していた状況から発見に至った例もあるという。
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次回「違法データを見つけ出せ、米警察の「ポルノ探知犬」<2> 頼れる相棒の条件とは」は10月23日公開
米警察の「ポルノ探知犬」、脅威の嗅覚を実証