新種の人類ホモ・ナレディ発見、その舞台裏は<1> 洞窟の探索に悪戦苦闘

南アフリカのライジングスター洞窟で見つかった「ホモ・ナレディ」の頭部化石=ESF

2016.09.25 Sun posted at 09:40 JST

(CNN) 南アフリカのライジングスター洞窟の奥深くで3年前、子どもや成人、未成年者ら15人分の骨格が発見された。いずれも今まで知られていなかった新種の人類の祖先のものだった。「ホモ・ナレディ」と名付けられたこれらの新種の発見は、「人類の定義の再考を迫るもの」として大きな議論を呼んでいる。

古生物学の世界では、全身骨格1体を発見するだけでも宝くじを当てるのに等しい幸運とされる。だがこの洞窟からは1500点以上の骨化石が出土した。アフリカ大陸で発見されたヒト族の骨格としては過去最多の規模になる。

発見したのは南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学の古人類学者、リー・バーガー氏。バーガー氏は2013年、これらの骨格を発見する寸前のところまで迫っていた。だが、洞窟唯一の出入り口から出土現場に通じる細い通路に行く手を阻まれた。「スーパーマンズ・クロール」の異名をとるこの通路は極端に幅が狭く、バーガー氏の体格で通り抜けるのはほぼ不可能だった。

しかしバーガー氏はフェイスブックで細身の洞窟探検家を募集。ウィットウォーターズランド大学の自身の研究チームに加わるよう求めた。こうして集められたメンバーとともに、人類の系統樹に新たな種を付け加える発見が実現した。

バーガー氏が集めた調査メンバー。狭い洞窟での活動が可能な細身の女性で占められている

バーガー氏は08年、「アウストラロピテクス・セディバ」という別の新種の骨化石を発見。すでに学会で確固とした地位を築いていた。このときはヨハネスブルク北郊にあるマラパ自然保護区で、9歳になるバーガー氏の息子が骨格の一部に遭遇。「パパ、化石を見つけたよ」と叫び、有名なエピソードとなった。

だがバーガー氏の名前を古人類学の歴史に刻んだのは、ホモ・ナレディの発見だ。アウストラロピテクス・セディバを約5年前に発見して以来、一帯にもっと多くの骨が埋まっているはずだとみるバーガー氏の確信は深まっていた。南アのこの地域は「人類のゆりかご」と呼ばれ、20世紀に多くの骨化石が発見されていた。

バーガー氏の予感は当たった。発掘をさらに進めていたある夜のこと、アマチュア探検家のスティーブ・タッカー氏が報告に訪れた。タッカー氏は仲間のリック・ハンター氏と共にスーパーマンズ・クロールを通り抜けることに成功。洞窟で驚きの発見をしていた。

バーガー氏は両氏が撮影した写真を見た瞬間から、ホモ・ナレディの魅力に取りつかれたという。「信じられないような写真だった。地下洞窟の床に骨が横たわっていた。原始人のものだとすぐに分かった」と話す。

新種の骨化石が見つかったライジングスター洞窟

こうして発見された新種は、ライジングスター洞窟にちなんでホモ・ナレディと名付けられた。「ナレディ」は現地のソト語で「星」を意味する。

ホモ・ナレディは人類に似た足や、長距離を歩くのに適した細い長い脚を持っている。一方で指が湾曲しているほか肩も類人猿のものに近く、木に登ってぶら下がるために使われた可能性もある。

頭部も現代的な要素と原始的な特徴が混在している。頭蓋骨(ずがいこつ)の形状は人類によく似ているが、脳は小さく現生人類の半分以下の大きさしかない。

ホモ・ナレディが人類に似た足と湾曲した指を兼ね備えていることについては、研究チーム内でも驚きと不安の念が広がった。バーガー氏は人類と原始人の特徴を併せ持つホモ・ナレディについて、「クレージーな生き物」と形容する。

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