ウクライナ大統領候補の「チョコレート王」にインタビュー

ペトロ・ポロシェンコ氏

2014.05.22 Thu posted at 11:36 JST

ウクライナ北部チェルニーヒウ(CNN) 25日に予定されるウクライナ大統領選で当選が有力視されている親欧州派の実業家、ペトロ・ポロシェンコ氏(48)がこのほど、CNNの独占インタビューに応じた。

ポロシェンコ氏は20年近く前に創業した菓子メーカーで富を築いたオリガルヒ(ロシアの寡占的な新興資本家)で、「チョコレート王」の異名をとる。オリガルヒであることは大統領選に有利かとの質問を受け、口元にかすかな笑みを浮かべつつ目には鋼の強さをのぞかせて「私には分からない。オリガルヒに聞いてくれ」と英語で返した。

米経済誌フォーブスによれば、ポロシェンコ氏の資産は13億ドル(約1300億円)と、ウクライナで7位。財力だけでなく、外相や国家安全保障防衛会議書記を歴任した経験も強みだ。現在は国会議員として親欧州路線を主導する。

大統領選に向けた最新の世論調査では、2番手のチモシェンコ元首相に大差をつけて、20人以上の候補者のトップに立つ。

しかし選挙に勝ったとしても、その先には困難な課題が待ち受ける。クリミア半島がロシアに編入され、東部では複数の州が独立を宣言するなど、ウクライナは苦しい状況に追い込まれている。

ヤヌコビッチ前大統領はロシアへ逃亡し、その後を暫定大統領が引き継いだ。だからこそ今、大統領選を実施することが重要なのだと、ポロシェンコ氏は主張する。

「わが国には正統性のある強い最高司令官が必要だ。すべてのパートナーと直接対話を始めることのできる大統領が必要だ」――北部チェルニーヒウで開かれた集会を前に、同氏はそう語った。

市中心部の広場では数百人の支持者らが雨の中、ポロシェンコ氏の長い演説に耳を傾けた。演説を終えた同氏は、集まった人々に自身の顔とサインが入ったカードを配った。

同氏は集会の後、CNNとのインタビューに応じ、「選挙後にまず訪問したいのは欧州でもロシアでも米国でもなく、東部ドネツクだ」と力を込めた。「ドネツク人民共和国」の独立を一方的に宣言している親ロシア派勢力については「銃を手にした500人ほどの集団で、住民の代表とはいえない」と批判。「住民が選んだ相手となら喜んで対話したい。地方自治の拡大に反対するつもりもない」と強調した。

さらに、「ウクライナのすべての国民には話したい言語を話し、選びたい指導者を選び、地方分権の恩恵にあずかる権利がある」と述べた。

同氏は譲ることのできない大きな目標として、「欧州への統合」と「ウクライナの主権と一体性の維持」を挙げた。

ロシアのプーチン大統領と話し合う意思はあるかとの質問には回答を避け、プーチン氏の名前さえ口にしようとせずに話題を変えた。同じ質問を再び投げかけてみたが、ウクライナとロシアに米国、欧州連合(EU)を加えた4者協議の枠組みに言及するにとどまった。

一方でEU加盟の目標については熱心に語り、個人的には北大西洋条約機構(NATO)への加盟も望んでいるが、「ウクライナは現在戦争状態にあるため残念ながら受け入れてもらえないだろう」と話した。

ポロシェンコ氏は大統領選に勝利した場合、菓子メーカーを売却する意向を示している。ただし、テレビ局の「カナル5」を手放す気はないという。

25日の投票で同氏が過半数の票を獲得した場合は、決選投票なしで結果が確定する。集会に参加したある女性は、「選挙をできるだけ早く終わらせてほしい」との理由から、優勢とされる同氏に投票すると語った。

同じく親欧州派の2番手チモシェンコ氏との間に、政策の違いはほとんどないとの指摘もある。ウクライナ国民の間では「新しい大統領が決まればすべての問題がたちまち解決する」といった期待が広がっていることから、「だれが就任しても期待に応えることは不可能で、国民の幻滅は免れない」と予想する専門家もいる。

一方で、ウクライナを再びひとつにまとめられる可能性が最も大きいのはポロシェンコ氏との声も高い。同氏自身、インタビューでは欧州への統合を「1期目」の目標と表現し、「もしも当選したら」という質問を「当選した時に」と訂正するなど、強い自信をのぞかせた。

ウクライナ大統領候補にインタビュー

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