失言・失態・討論会――名場面とともに振り返る米大統領選

2012.12.27 Thu posted at 09:13 JST

ワシントン(CNN) 11月6日に投開票が行われた米大統領選では、現職のオバマ大統領(民主党)と、共和党の大統領候補ミット・ロムニー氏が激突したが、そこに至るまでには様々な出来事があった。

名優クリント・イーストウッド氏が空っぽの椅子に話しかけたのを覚えているだろうか。あるいは、散々だったオバマ大統領の1回目の討論会は。大統領選には、驚くような失言や戦略上の失態もたくさんあった。

2012年の米大統領選を彩った様々な出来事や発言を振り返ってみよう。

1月9日:「首にするのが好き」

医療保険について質問を受けたロムニー氏が「私にサービスを提供する人々を解雇することが出来ることが好きだ」と語ったが、この発言は他の共和党候補からすぐさま激しい非難を受けた。ロムニー氏は後に、米紙ウォールストリート・ジャーナルに対して、自分の発言にもう少し注意しなければならないと気づかせた瞬間だったと語っている。

1~3月:女性に対する戦争

連邦政府が宗教組織に対し、被雇用者への避妊関連の保険を提供するよう求めたことで、民主党と共和党の間で「戦争」が起こった。有権者の半分は女性だが、ジェンダー論争は公聴会や選挙キャンペーン、ラジオのトークショーにも飛び火した。

4月10日:ロムニー氏が共和党からの指名を確実に

リック・サントラム元上院議員が共和党候補指名争いからの撤退を表明したことで、ロムニー氏の指名が事実上決まった。

医療保険制度改革(通称オバマケア)に対する合憲判決を喜ぶ支持者=6月28日

6月15日:不法移民の若者に対する国外退去方針を撤回

オバマ政権は、幼少期に米国に入国した不法移民の若者のうち、一定の条件を満たした者については国外追放を求めない方針を明らかにした。ヒスパニック(中南米系)の票を取り込もうとする動きだとして批判する声も上がったが、支持者からは、同様の措置を実現しようとして議会で否決されていた「DREAM法」の要諦を実現するための動きだとして歓迎された。

6月18日:オバマケアに対する合憲判決

米最高裁は、オバマ政権の重要な実績の一つである医療保険制度改革(通称オバマケア)に対して合憲との判断を下した。オバマ陣営が大きな勝利と見なしたのに対し、ロムニー陣営はオバマケアの撤廃に向けて取り組むことを表明した。

7月:ロムニー氏が外遊

自身の発言に注意するといったにもかかわらず、ロムニー氏は外遊先で失言を繰り返した。ロンドンでは夏季五輪を主催する能力に対して疑問を呈したほか、イスラエルの文化がその経済的な成功に重要な役割を果たしたとの見方を示してパレスチナの人々の怒りを買った。

7月13日:「あなたがそれを生み出したのではない」

オバマ大統領がバージニア州ロアノークで聴衆に向かって、「もし、あなたが仕事を得られたとしたら、それは、あなたがそれを生み出したのではない、ほかの誰かがそうしたのだ」と発言した。このコメントに対しては、保守層や共和党寄りの事業主から非難の声が上がった。共和党支持者は後に、このコメントから「私たちがそれを生み出した」という新しいキャッチコピーを作り出し、Tシャツやステッカーなどに流用した。

空の椅子に語りかけるイーストウッド氏=8月30日

8月8日:オバマ大統領のリードが最大に

民主党と共和党の全国党大会を数週間後に控え、CNNの世論調査では49%対43%の支持率で、オバマ大統領のリードが過去最大となった。

8月11日:共和党副大統領候補にポール・ライアン氏を指名

ロムニー氏はキャンペーンへのてこ入れと保守層の取り込みのため、ランニングメート(副大統領候補)にウィスコンシン州選出の下院議員、ポール・ライアン氏(42)を選んだ。経済政策通のライアン氏は、1960~1974年に生まれた「X世代」として初めて大統領選への参加を決めた。

8月30日:クリント・イーストウッド氏のひとり語り

俳優であり監督としても知られるクリント・イーストウッド氏が共和党全国大会で、誰も座っていない椅子に向かってひとり語りを行った。これは、すぐさまテレビでネットで取り上げられ、同じに日に共和党からの指名を受諾したロムニー氏の演説よりも注目を集める結果となった。

9月5日:ビル・クリントン元大統領の演説

ビル・クリントン元大統領は民主党全国大会でエネルギッシュな演説を披露し、民主党支持者に感動を与えた。もっと抑えの利いたオバマ大統領の演説をかすませるものとなった。

ロムニー氏(左)が第1回討論顔をへて巻き返しに成功

9月11日:在リビア領事館襲撃事件

駐リビア大使のクリス・スティーブンス氏を含む4人がリビア・ベンガジで殺害された事件はその後、オバマ政権による謝罪へとつながり、大統領候補討論会でも議題に上がった。ロムニー氏を含む共和党議員は、反イスラムの映画に怒った集団による襲撃というオバマ政権の当初の説明や、中東地域における安全保障上の脅威を適切に判断できていないことを非難した。

9月17日:「47%」

ロムニー氏が5月に行われた非公開の資金援助を求める集会で、「オバマ大統領に投票する47%の有権者は政府に依存している」などとの発言をしたことが隠し撮りされていた動画によって暴露された。ロムニー候補の支持率は急落した。

10月3日:オバマ大統領が討論会で大失敗

テレビ中継される大統領候補同士の討論会の1回目が行われたが、オバマ大統領は、主要な論点でロムニー氏に積極的な攻撃を仕掛けられなかったほか、まるで退屈しているのかあるいは困っているかのように視線をそらすなど、散々な結果に終わった。オバマ大統領の精彩を欠いた論戦は批判を浴びた。一方、ロムニー氏は公共放送PBSに対する支出削減に関連した「ビッグ・バード」発言について謝罪するなどしたが、それでも、オバマ大統領に対する支持率は減少した。

10月9日:ロムニー氏の逆襲

オバマ大統領の1回目の討論会が散々だったことを受け、CNNの世論調査ではロムニー氏が初めてオバマ大統領を48%対47%でリードした。これは選挙戦が接戦になっていることを示しており、終盤まで選挙戦がもつれることを示唆していた。

オバマ大統領が再選を決める=11月6日

10月16日:「女性で一杯のバインダー」

2回目の討論会で、ロムニー氏は、マサチューセッツ州知事時代に閣僚の多様性を高めようとしたときの説明として「女性で一杯のバインダー」という言葉を使ったが、これは多くの批判を浴びたほか、インターネットでも皮肉られた。一方、オバマ大統領は、はるかにはつらつとしたパフォーマンスを見せた。

10月22日:「銃剣と軍馬」

3回目の討論会で、積極的なオバマ大統領は、米軍が「銃剣と軍馬」の利用を減らしていることを説明することでロムニー氏に反撃し、舌鋒の鋭さを再び証明した。この指摘は、ロムニー氏が米軍の戦略について知識が浅い人物であることを示そうとする狙いがあった。

10月25日:期日前投票

オバマ大統領は現職の大統領としては初めて期日前投票を行った。地元シカゴでの投票は期日前投票を行う支持者を獲得しようとする戦略を反映したものだった。

10月29日:大型温帯低気圧「サンディ」

サンディは東海岸を襲い、100人を超える死者と数百万世帯の停電、家や財産を失った何千人もの被災者を生み出した。サンディが去った後、両候補は選挙戦を中断し、続く数日間は災害を政治化しないよう慎重な足取りとなった。クリスティ・ニュージャージー州知事(共和)がオバマ政権の災害後の取り組みを賞賛し、ロムニー陣営の選挙戦はより難しいものとなった。

11月6日:投票日

数十億ドルの資金と何千もの広告と何年もの選挙戦をへて、米国はついに決断する機会を得た。

そして、オバマ大統領が再選を果たした。

2分で振り返る米大統領選 共和党予備選からサンディまで

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