香港(CNN) 米大統領選の候補者による直接討論会で「悪役」となった感もある中国内には、オバマ大統領の再選を受け安堵(あんど)のため息があるに違いない。
目の敵にされる苦々しい大統領選が終わった安心感とも言える。また、共和党の大統領候補だったミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が交渉相手でなくなったことは特に喜ばしい材料だろう。ロムニー氏は対中強硬論を説いていたからだ。
中国のある政治コラムニストは、周知のオバマ氏が勝って非常に満足と主張。その上で、「未知の悪魔より、既に知っている悪魔の方が良い」とも付け加えた。
中国内では、オバマ氏再選を受け、米国の政治的欠陥や国際舞台での威信の後退に言及する論調もある。共産党機関紙の人民日報はオバマ氏の前途に立ちはだかる内政面などでの「暗黒の日々」を予告。「再選後、早々とワシントンの政治マシンによる妨害行為に直面するだろう」と報じた。
中国政府寄りの新聞「環球時報」の編集者は中国のツイッター版「新浪微博」で「オバマ氏と米国に幸運を祈るが、中国の存在感の増大と米国の退潮は国際政治での大きなリスク要因となることを示唆する」と指摘。
中国のサイト「Netease.com」には、オバマ氏に向け「今後4年間は自国の問題に専念し、他国の政治問題への干渉を止めることを求める」との書き込みもあった。
意見対立が多い米中だが、両国関係の現状を考えれば相手国に対する無関心は効果を生むとは言えない。中国は米国の最大の貿易相手国の1つであり、対中輸出額は増えている。中国は米国債1兆ドル(約80兆円)以上を保有している。
米大統領選の最中、オバマ大統領は中国に対する貿易上の対抗措置を幾つか打ち出した。同国産タイヤや太陽パネルへの関税上乗せ、自動車産業への不公正な補助制度に反発した世界貿易機関(WTO)への提訴だ。ただ、これらの措置は政治的得点を狙ったというより、2期目の対中政策でより強硬になる前兆との受け止め方がある。
香港科技大学の学者は、オバマ大統領は中国の台頭を受け国際戦略での対応を迫られていると指摘。「勢力を伸張させる中国は骨の折れる関係構築を突き付けている」と分析した。
中国では8日、共産党の新指導部などを決める第18回党大会が開幕した。中国の国政のかじ取りを今後10年間担う新たな世代の指導者が誕生することになる。国際社会の視線は最高決定機関である党の政治局常務委員の人選に注がれている。
米中にとって今年11月は重要な変化の時期となった。「環球時報」の編集者は両国関係が「共に満足出来る状態になることを期待したい」と指摘。オバマ氏が対中政策で見事な手腕を見せ、中国に平和的な成長の促進を促し国際社会から大国間の力の闘争の政治的悲劇が消えることを期待したいと望んだ。