地球上で最も遠い場所「南極」で心と胃袋を満たす方法は?

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プリンセス・エリザベス基地で料理人として働くトマ・デュコンセイユさん/Courtesy International Polar Foundation

プリンセス・エリザベス基地で料理人として働くトマ・デュコンセイユさん/Courtesy International Polar Foundation

生きるうえで必要な食と食材の備蓄

プリンセス・エリザベス基地でデュコンセイユさんが作る食事は、スープ、肉、ピザ、サラダ、キッシュ、デザートなどバラエティーに富んでいる。「ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)向けのメニューもあり、誰もがさまざまな選択肢から選べます」とデュコンセイユさん。クリスマスや正月などの特別な日には、フォアグラや七面鳥の詰め物、ヌガーグラッセなどを用意する。

「消費する側としては、まるでレストランにいるような気分。素晴らしい、充実したディナーです」とロベールさんは言う。

基地では通常、一度に20〜30人のクルーが滞在するが、月日をかけて45〜50人が滞在できるよう拡張された。クルーたちは、テーブルセッティング、食器の乾燥や片付け、大量のジャガイモの皮むきなど、厨房(ちゅうぼう)でデュコンセイユさんを交互に手伝っている。生きていくために欠かせない食を皆で支えあっているのだ。

基地は孤立しており、クルーの人数も変動するため、季節ごとに主食の備蓄を維持することが重要となる。穀物や豆類、トマトの缶詰など日持ちのするものは、毎月空輸される生鮮食品とは別ルートで運ばれてくる。

「乾燥食品と冷凍食品が大量に詰め込まれたコンテナ船がベルギーから隔年で到着し、これらの食材が供給されます」(デュコンセイユさん)

基地の地下には、乾燥食品用の棚や輸送用コンテナほどの大きさの冷凍庫(約零下25度)、小型の冷蔵庫(約5~6.7度)が備わった大きな部屋があり、食品はそこに保管されている。冷蔵庫があるのは、果物など冷凍できない食材が多いからだという。

デュコンセイユさんは事前に献立を考えることはないが、食材をしっかりと管理することで、在庫を正確に把握している。新鮮な食材が貴重なだけに、基地で働く料理人は順応性と創造性が求められる。

「人数や傷みやすい食材によりますが、私はフィーリングで料理します。すべては手元にある食材にかかっています」(デュコンセイユさん)

東南極にはさまざまな調査対象があるため、プリンセス・エリザベス基地に滞在する科学者たちは定期的に現地調査に出かけるが、デュコンセイユさんはここでも重要な役割を果たしている。

「現地調査には2~3週間かかり、4~6人が参加します。そのため遠征先で必要な食事の量を見積もる必要があります。研究者が現地で貴重な時間を無駄にすることなく、解凍して食事を楽しむことができるように、大量に食事を作るたびに一部を冷凍しています」

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