五輪の「スーパースプレッダー」を危惧、現状での開催に米専門家が警鐘

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東京五輪・パラリンピックをめぐり、専門家から公衆衛生の観点からの報道を求める声が出ている/Jinhee Lee/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

東京五輪・パラリンピックをめぐり、専門家から公衆衛生の観点からの報道を求める声が出ている/Jinhee Lee/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

(CNN Business) 東京オリンピックが開幕する7月23日まであと50日を切った。予定通りに開催されれば異例づくめの大会になる。当日は大会に関する大々的な報道が予想されるが、それ以上に大きく、もっと重要なのは、公衆衛生に関する報道だ。

日本の新型コロナウイルス感染は高い水準で推移し続けている。その水準は、大会の延期が決まった1年前をはるかに上回る。国民へのワクチン接種開始は遅れ、医療態勢は逼迫(ひっぱく)している。朝日新聞は国民感情を反映して先月、大会の中止を訴える社説を掲載した。

それでも日本は予定通りに開催すると宣言しており、あと数週間もすれば大勢の選手団や関係者、報道陣が東京に降り立つ。この状況は、2021年の東京オリンピックが感染の激増を引き起こす「スーパースプレッダーイベント」として記憶されることになるかどうかも含め、幾つもの疑問を生じさせる。

医療倫理を専門とする米ニューヨーク大学グロスマン医学部のアーサー・カプラン教授は3日、CNNの電話取材に応じ、マスコミがこれまでのところ、大会をめぐる公衆衛生問題に十分な脚光を浴びせていない状況に強い懸念を示した。

米国では日常生活が元の状態に戻りつつあり、新型コロナの話は聞き飽きたと感じるようになっているが、そうした状況はニュース報道をゆがめかねないとカプラン教授は危惧する。「メディアにとっては大きな課題がある」「物事が正常に戻ったように描写したがる傾向が存在するが、世界の大部分はそうした状況にない」

「全ての大手報道機関には、スポーツ面だけでなく、公衆衛生面にも同じくらい注意を払う義務がある」「世界中の多くの国が、公衆衛生上の大流行のさ中にありながら、水球やホッケーの代表選手団を送り込むという事実を無視しないことが重要だと思う」とカプラン教授は言い添えた。

ジョージ・ワシントン大学のジョナサン・ライナー医学・外科学教授はマスコミの報道について、何よりも日本のワクチン接種について問いかけるべきだと強調する。

「日本は何千人もの人がかかわる巨大な国際イベントを実施したい意向でありながら、国内でワクチン接種を完了したのは国民のわずか3%にすぎない。スポーツイベントのためにそれほど多くの人材や資源を消費することは果たして公正なのか。資金や物理的資源はもっと多くの国民にワクチンを接種してもらうために費やした方が良くないか。大会組織委員会は選手全員にワクチン接種を義務付けるのか。ワクチン接種態勢が整わない国々からこれほど多くの選手がやって来るのに、それにまつわる倫理はどうなのか。日本が急増の波から立ち直ろうとしている時に、なぜこれほど多くの人を集めるのか」

大会には選手のほかにも大勢の関係者がかかわる。選手を支える何千人ものスタッフや、大会の取材に訪れる海外からの報道陣にも、ワクチン接種証明の提示を求めるのか。それは単純な疑問に思えるが、CNNが3日に取材した時点で、国際オリンピック委員会(IOC)からの返答はなかった。

米放送局のNBCは、そうした課題や中止を求める声を念頭に、大会をどう伝える予定なのか。同社広報は先にCNNの取材に対し「引き続き、7月23日から始まる東京大会の模様を米国の視聴者に届ける」ことに力を入れるとコメントした。

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