南極西部の急速な融解は「不可避」、海面上昇に壊滅的影響及ぼす恐れ 新研究

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「終末の氷河」の異名をとる南極西部のスウェイツ氷河/NASA/OIB/Jeremy Harbeck

「終末の氷河」の異名をとる南極西部のスウェイツ氷河/NASA/OIB/Jeremy Harbeck

(CNN) 人類の活動に起因する地球温暖化が加速する中、南極大陸西部の棚氷の急速な融解は今や不可避となった可能性がある。実現すれば世界中の海面上昇に壊滅的な影響を及ぼしかねないとみられる。新たな研究から明らかになった。

世界は地球温暖化の抑制に向けて野心的な目標を設定しているが、南極西部では今後相当の海洋温暖化と棚氷の融解が発生する見通しだ。科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジに23日掲載された新たな研究論文が伝えた。

氷河の端で海洋に突き出た棚氷は、氷が地上に残るのを助け、海洋への流出を遅らせる。海水面の上昇を食い止める重要な防御壁としての役割を果たしている。棚氷は融解に伴って薄くなり、防御壁としての機能も失う。

多くの証拠から南極西部の氷の消失は不可逆的なものになる可能性が示されているものの、気候政策によってそれをどこまで食い止められるのかは判然としない。

研究者らは異なる気候変動シナリオに基づき、海洋温暖化と棚氷の融解の割合を分析した。

その結果、仮に産業革命前と比べた気温の上昇幅を1.5度に抑えたとしても、気候変動は依然として歴史的な水準の3倍に上る海水温上昇を引き起こす可能性があるという。世界の気候政策は現在のところ、上昇幅1.5度までの抑制を実現できる見通しで進んでいない。

相当量の温室効果ガス削減を即座に実行してもなお、海水温上昇阻止には「限定的な力」しか発揮できず、それを引き金に南極西部の氷床は崩壊するだろうと論文は指摘する。

英国南極観測局(BAS)で海洋モデリングに携わり、今回の論文の筆頭著者も務めたケイトリン・ノーテン氏は「南極西部の氷の融解は、21世紀を通じてコントロール不能になってしまったかのように見える」と述べた。

ノーテン氏と同僚らは、自分たちの研究に限界があることも認める。南極西部における今後の融解ペースの予測は非常に複雑で、将来の結果を全て説明することは不可能だからだ。それでも一連のシナリオを確認した上で、論文著者らは棚氷の融解が現在不可避の状態にある点には自信を示している。

ノーテン氏は、たとえ展望が暗くても人類は化石燃料からの温室効果ガス排出削減を投げ出すわけにいかないと強調。西部以外の南極や世界の他の地域では、まだ壊滅的な結果が避けられる可能性があるからだと説明した。

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