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中国EV大手BYD、メキシコで工場建設を検討 米市場参入への足掛かりとなるか

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比亜迪(BYD)の車を眺める買い物客=ハンガリー・ブダペスト/Attila Volgyi/Xinhua/Getty Images

比亜迪(BYD)の車を眺める買い物客=ハンガリー・ブダペスト/Attila Volgyi/Xinhua/Getty Images

香港(CNN) 今年1月、5000台以上の電気自動車(EV)を積んだ中国の巨大輸送船が、欧州の港に向かった。

これらは中国のEVメーカー、比亜迪(BYD)の車だ。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏から出資を受けている同社は2023年10~12月期のEV販売台数で競合の米テスラを抜き世界首位になった。

中国国営新華社通信の報道によれば、BYDは今回、中国南部の深圳からドイツとオランダにEVを輸出する際、自社の巨大輸送船「BYDエクスプローラーNO.1」を初めて投入した。

これはBYDが著しく成長していることを鮮烈にビジュアルで示した一例だ。同社は国内市場を制圧したが、その勢いを維持するためには新たな道を切り開く必要がある。

それにはハンガリーとメキシコの2カ国が重要となってくる。どちらも巨大な自動車市場ではないが、欧州や北米への玄関口として機能し、真の意味で世界的な知名度を得たいというBYDの挑戦を支えることが可能だ。

BYDは両国への進出を進めている。昨年12月、同社にとって欧州初となる乗用車工場をハンガリーに新設すると発表。これについて同国のオルバン政権は、ハンガリー史上最大規模の投資の一つであり、南部のセゲドに数千人の雇用を創出すると述べた。

また同社は、メキシコへの進出も計画している。南東部ユカタン州政府の事情に詳しい情報筋がCNNに語ったところによると、BYDはメキシコに工場を建設することに関心を示しているが、1月の時点で計画は正式に決定しないという。BYDメキシコはコメントの要請に応じていない。

ハンガリーとメキシコへの進出によって、深圳を拠点とするBYDは多額の関税を回避しながら、大西洋の反対側に足掛かりを築くことができると専門家らは指摘する。また、これらの計画はBYDが厳しい地政学的な環境を乗り切るのにも一役買う可能性がある。とりわけ欧州の一部の政治家が、中国製EVが「洪水」のように押し寄せてくる事態に警戒感を強めているためだ。

かつて海外では知名度も低く、2011年にはテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)から嘲笑されていたBYDだが、同社を長年見守ってきた人々は、予想される同社の動向は、単に保護主義の高まりに対応したものではないと言う。

米コンサルティング会社シノ・オート・インサイツの創設者トゥー・リー氏は「私はこれをBYDが引き続きグローバル展開を行い、生産拠点の拡大を続ける動きと見なす」と語った。「彼らが世界制覇という壮大な野望を抱いていることは明らかだ」

二つの新ルート

人口960万人の小さな内陸国であるハンガリーは、特に中国の自動車部品メーカーにとって、欧州の生産拠点としてますます重要な存在となっている。

中国電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)や新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)などの中国企業は、独競合のメルセデス・ベンツ、BMW、アウディと並び、近年ハンガリーでの生産に多額の投資を行っている。BYDはすでに同国で存在感を示しており、17年にはコマーロム市に電気バス工場を開設している。

BYDはセゲドに新工場を開設することで、乗用車の自由貿易へのアクセスも獲得することになる。中国の長年の経済パートナーであるハンガリーのみならず、他の欧州連合(EU)の加盟国26カ国との自由貿易が可能になると、独シュミット・オートモーティブ・リサーチを率いる欧州自動車アナリストのマティアス・シュミット氏は述べている。

シュミット氏はCNNに対し、ハンガリーの人件費やエネルギーコストが、フランスやドイツといった他の自動車生産ハブと比較して低いことを引き合いに出し、「西欧諸国が提供するあらゆる恩恵をわずかなコストで享受できる」と話した。

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